米中間選挙まで1カ月 民主主義の旗を守れるか
毎日新聞 2022/10/13 東京朝刊 859文字
米国の中間選挙が1カ月後に迫った。11月8日に上下両院選や州知事選などが一斉に実施される。ロシアのウクライナ侵攻、40年ぶりの記録的なインフレなど争点は多岐にわたるが、何より問われるのは米国の民主主義である。
「民主主義は崩壊の瀬戸際にある」と考える米国民は約7割に達する。危機感は民主、共和の党派を超えて共有されている。問題は、その責任の所在を互いに押しつけ合っていることだ。
バイデン大統領は「トランプ氏が共和党を支配し、民主主義を破壊している」と指摘し、2020年大統領選の結果を否定する前大統領の姿勢を攻撃している。
これに対し、トランプ氏は「破壊しているのはバイデン氏ら急進的な民主党だ」と反論し、寛容な移民政策をとる現政権を「反米主義者」となじっている。
選挙戦は、両氏が激突した2年前の大統領選をほうふつとさせる。バイデン氏は就任時に公約した「団結」を棚上げにし、トランプ氏は一段と口を極めて対決姿勢を際立たせる。
激しさを増す党派対立に冷めた目を向ける国民は少なくない。2大政党に批判的な世論は過去30年で最悪の約3割に及ぶという。著しい政党不信である。
だが、それを克服しようとする論戦になっているとは言い難い。
トランプ氏の支持を得る共和党候補者の多くは、今なお「大統領選不正」を訴え続けている。中間選挙で敗北しても身勝手な理屈を持ち出して結果を認めず、集計が混乱に陥る事態も危惧される。
民主党の候補者は支持率が低迷するバイデン氏を押し立てるよりも、「親トランプ」か「反トランプ」かの選択を有権者に迫る。敵意をむき出しにして分断をあおる姿勢は共和党と変わらない。
世界の規範とされてきた米国の民主主義は、公正な自由選挙と、寛容を重んじる市民社会が支えてきた。それをないがしろにすれば、米国の土台は崩れる。
政治の混迷は外交にも飛び火する。同盟国や友好国の信頼が低下し、対立する中国やロシアを利することになる。
このまま民主主義を劣化させるのか、復元力を示すのか。米国の行方を世界が注目している。
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