Tomahawk Purchase with No Explanation or Discussion

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トマホーク購入 説明も議論もなき独走

2022/10/29 09:30

 数々の疑念が湧く。

 政府が米国製の長距離巡航ミサイル「トマホーク」の購入を検討していることが明らかになった。相手国のミサイル拠点を破壊する敵基地攻撃能力としての配備を視野に入れている。

 国家安全保障戦略の改定を公言する岸田文雄首相は、攻撃能力を含む「あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」としか国民に説明していない。既成事実化ばかりが先を行く。

 米国で開発されたトマホークの最大射程は2500キロに及ぶ。ジェットエンジンで低空を飛ぶため捕捉されにくく、重要施設への精密攻撃に用いられている。米政府は売却先を、英国など一部の同盟国に限ってきた。

 日本政府は、国産の「12式地対艦誘導弾」の射程を千キロほどに延ばす改良に着手しており、攻撃能力に転用する構えでいる。運用は2026年度となる見込みで、それまでの間の「抑止力」としてトマホーク購入を打診した。米政府の判断待ちという。

 攻撃能力の導入を首相に求めた自民党は「専守防衛の範囲だ」と主張する。相手国が攻撃に着手したとの判断を誤れば、国際法が禁じる先制攻撃になる。

 そもそも専守防衛は、日本が攻撃された時、必要最小限の実力行使で敵勢力を排除する「対処」を指す。相手の司令部まで標的に入れようという能力は、純然たる攻撃兵器にほかならない。

 国家安保戦略の改定について首相は「国民の理解」とか「幅広い議論」を口にしてきた。もはや信を置けない。

 現に、防衛力を巡る与党間協議や政府有識者会議の討議は始まった段階なのに、岸田政権は既に攻撃能力を導入する考えを米国に伝えている。首相自身、防衛費の大幅な増額を約束した。

 ほかにも、防衛装備移転三原則の緩和、自衛隊による平時からの空港や港湾の活用促進、有事の迅速輸送に向けた民間船舶の利用増大といった「検討」が当然のように進められている。

 改定に合わせ、専守防衛の原則はおろか、あらゆる制約を取り払おうと言わんばかりだ。

 中国抑止を急ぐ米国はどこまで日本に役務の拡大を迫っているのか。追従して「盾」から「矛」へ防衛政策を転換すれば、周辺国との軍拡競争は過熱し、有事の恐れはかえって高まる。

 もっと議論の幅を広げたい。有事を未然に防ぐ方途の観点を、このまま置き去りにできない。

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