トランプ氏の出馬 正々堂々と民主政治競え
トランプ米前大統領が2024年大統領選に共和党から立候補すると表明した。今後、本選に向け党の指名を目指す。
退任した大統領が選挙で返り咲いたのは19世紀末の一度だけだ。再選出馬に踏み切ったのは民主党のバイデン大統領に負けた前回の雪辱を果たしたい一念からだろう。
ならば、国内外の諸課題の処方箋についてバイデン政権と競い合い、民主政治のルールに基づいて正々堂々と戦ってもらいたい。
トランプ氏は大統領退任後も各地で政治集会を重ね、出馬を強く示唆してきた。8日の中間選挙で共和党新人候補の選定などに深く関与したのも、選挙を通じて党内の権力基盤を一層強固にし、大統領選に打って出る布石だった。
だが、共和党のシンボルカラーを示す「赤い大波」の圧勝に期待したトランプ氏らの選挙戦略は思惑通りに運ばなかった。このことを冷静に認識すべきである。
トランプ氏は今も、前回大統領選の敗因は「大規模不正があったせいだ」と信じている。中間選挙では新人候補らに大統領選の「不正」を争点にするよう求めた。
それが穏健な共和党支持層や無党派層の反発を招いたことは否定できまい。トランプ氏が後押しした多くの新人候補が当選を逃した底流にも、そうした見方があったのではないか。トランプ氏は根強い支持層を持つとはいえ、自らの主張がどれだけ有権者に受け入れられているのかについて、再考すべきではないか。
トランプ氏は大統領在任中、覇権主義的に振る舞う中国に厳しく対(たい)峙(じ)するなど大きな実績も挙げてきた。だが、トランプ氏の支持勢力による昨年1月の連邦議会議事堂襲撃事件は、米政治史における一大汚点である。根拠がないまま無責任に「不正」を連呼することは封印してほしい。
共和党内では、ほかにも大統領候補の指名争いに名乗りを上げそうな動きがある。トランプ政権時のペンス副大統領も今ではトランプ氏と距離を置き、自身の出馬に含みを持たせる。フロリダ州のデサンティス知事の人気も高い。そうした中でトランプ氏がいかに支持を広げられるかである。
不毛な対立で米国の政治状況が不安定化すれば、中露などの専制主義勢力を利するだけだ。その点を踏まえて民主主義の範となる大統領選にしてもらいたい。
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