[日米統合演習]いつか来た道を恐れよ
南西諸島を主な舞台に10日から始まった日米共同統合演習「キーン・ソード」は、きょう19日で日程を終える。
演習期間中、沖縄の自衛隊・米軍基地だけでなく、中城湾港や与那国空港など民間の港湾施設・空港も使用され、大量の車両や物資が運び込まれた。
台湾に近い与那国では、105ミリ砲を搭載する自衛隊の16式機動戦闘車(MCV)が日常生活に欠かせない公道を走り抜け、陸上自衛隊与那国駐屯地に入った。
物資が次々に運び込まれ軍用車両が行き交う様は、沖縄戦を思い起こさせるものがあり、島が戦場化する不安をかき立てずにはおかない。
この数年、目立つのは南西諸島のミサイル要塞(ようさい)化だ。
中国の海洋進出に対抗する形で自衛隊は、南西諸島の島々に地対艦ミサイル部隊を配置し、要塞化を進めてきた。
今回の演習でも、有事を想定した地対艦ミサイルの展開訓練が行われている。
日米統合演習が、中国の海洋進出を念頭に、南西諸島を舞台にして、このような規模とこのような形態で実施されるのは、復帰後初めてではないか。
南西諸島の軍事要塞化と日米の一体化は急速に進みつつあり、沖縄の基地問題の性格を根本から変えるような動きだとみなければならない。
懸念されるのは、「台湾有事」を巡って日本社会の空気が一段と強硬になり、中国の脅威に対抗するため基地の機能強化を当然視する世論が広がることだ。
今回の日米統合演習を通して浮かび上がってきた根本的な疑問は、いざというとき、住民(非戦闘員)をどのようにして避難させ、あるいは救出するか、という点である。
在韓米軍は、朝鮮半島有事を想定し、韓国在住の米国民などを対象にした「非戦闘員避難救出作戦」(NEO)の訓練を行っている。
国民保護法に基づいて県は、沖縄県国民保護計画を策定している。取り組み方針で強調されているのは、「悲惨な地上戦の経験」や「島しょ県」「米軍基地の集中」などの特殊性を抱えていることである。
住民の命を守るために、いつの時点で、どういう手段で、どこに避難させるつもりか。
ミサイル要塞化は、有事の際、相手国からのミサイル基地攻撃を誘発する可能性が高い。
そもそも台湾有事とはどのような事態なのか、それもあいまいなままだ。
日韓、米中、日中首脳会談が相次いで行われた。
お互いの主張のどこに違いがあるか。相いれない点は何か。共通に取り組める問題は何か。
首脳同士が対面で話し合い、共通の利益を模索するのは重要だ。対立をエスカレートさせない外交にこそ期待したい。
「敵基地攻撃能力」に関する十分な議論もないまま、現実には地対艦ミサイルの射程を大幅に伸ばす計画が進みつつあり、専守防衛は風前のともしびだ。そのような事態こそ危うい。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.