Large-Scale Change in Security: Credibility of Cabinet Decision on 3 Security Documents Should Be Questioned in the Election

<--

[安保大変容:3文書閣議決定]選挙で信を問うべきだ

結論ありき総額ありき、国会論議は深まらず国民に知らせる努力もせず、多くの懸念を残したまま文字通りあたふたと、安全保障に関わる重大な政策転換が承認された。

政府は16日、安保関連3文書を閣議決定した。

 (1)外交・防衛の基本方針を定めた「国家安全保障戦略」(2)防衛目標を達成するための方法や手段を示した「国家防衛戦略」(3)経費の総額や主要装備品などを盛り込んだ「防衛力整備計画」の三つの基本文書である。

 3文書を貫く最大の特徴は、従来の抑制的な防衛政策を転換し、米軍に委ねてきた打撃力を自ら行使する意思を示したことだ。

 3文書は、他国の領域にあるミサイル発射地点を攻撃する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を戦後初めて明示し、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入などミサイル網の整備を盛り込んだ。

 政府は「専守防衛を堅持する」と強調する。だが2014年の集団的自衛権の行使容認や、今回の敵基地攻撃能力の保有は、専守防衛とどのように両立するのか。

 ミサイル発射の判断を誤れば国際法違反の先制攻撃になりかねない。軍拡競争への懸念も拭いきれない。

 憲法9条を持つ日本にとって敵基地攻撃は、憲法の破壊に直結しかねない最高度の判断である。国会でまともな議論がないのは、国会の役割放棄というしかない。

岸田文雄首相は、閣議決定後の記者会見で、脅威を抑止するために必要な能力として、南西地域の防衛体制の強化を挙げた。

 防衛力整備計画によると、陸上自衛隊那覇駐屯地の第15旅団を師団に増強するほか、ミサイル攻撃に耐えられるよう同団司令部を地下化することも検討する。

 米軍の火薬庫の共同使用や、敵の射程圏外から攻撃できる長射程ミサイルの配備など、実戦を想定した施設整備、部隊増強、ミサイル配備計画がめじろ押しだ。それだけではない。民間の空港、港湾の使用も想定されている。

 実戦を意識した過去に例のない展開だ。だが、県や県民への丁寧な説明はない。陸自の第15旅団が国民保護の役割を担うというが、それすら中身は曖昧なままだ。

 沖縄戦の前年、1944年に第32軍司令部の下にさまざまな部隊が配備され、県内は軍事一色に塗りつぶされた。そのことを想起させるような急展開ぶりである。

岸田首相は会見で、現在の安全保障環境では沖縄に米軍が駐留する重要性は「さらに増している」とも強調した。

 本土の政治家や外務・防衛官僚が「安保体制が持たない」との理由で、米軍基地の本土移転に反対してきた事実を忘れてはならない。

 米軍専用施設の7割が沖縄に集中している現実は、政治の怠慢というほかない。

 防衛費に充てる増税も決めており、総選挙で信を問うべきだ。

About this publication