Judging Trump’s Attack on Congress: Damage to Democracy Must Not Be Excused

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議会襲撃トランプ氏断罪 民主主義破壊、許されぬ

民主主義の土台を突き崩しかねない事件が、あろうことか、国民主権を掲げる国々で相次いでいる。2年前の米国を模倣したような議会襲撃が、今度は南米の大国ブラジルで起きた。

 米国の事件はトランプ前大統領が扇動した―。そう断罪する最終報告書を下院特別委員会が昨年12月にまとめた。反乱扇動など四つの容疑に当たるとして、刑事訴追も司法省に要求している。議会による大統領経験者の訴追要求は初めてで、事件の深刻さがうかがえる。

制度があるだけでは機能しないし、形骸化を防げないのが民主主義だろう。他国の事件だと軽んじず教訓を引き出したい。

 米下院の報告書は衝撃的な内容だった。トランプ氏の支持者らが議事堂に乱入し、警察官1人を含む5人が死亡した襲撃について「要因はトランプ前大統領にあった」と指弾している。

 前年の大統領選での敗北を認めず、結果をひっくり返そうとして、議会に向かうよう支持者をあおったと認定。とりわけ、あの日、首都ワシントンに集まった数万人の支持者に「死ぬ気で戦え」と演説、議会へ行進するよう指示したという。

 議会襲撃を大統領が容認することは許されない。ましてや指示したのであれば、言語道断だ。民主主義の破壊者と言われても仕方なかろう。

 刑事訴追の要求に法的拘束力はない。とはいえ、反乱扇動の罪で有罪になれば、公職資格を剝奪される可能性がある。

 トランプ氏は「極めて党派的。魔女狩りだ」と反発している。対立する民主党主導での結論だけに、党利党略だと考える人もいるだろう。ただ、1年半かけて約千回も前政権の高官らから聞き取り調査をした結果である。重く受け止めたい。

今月8日のブラジルでの議会襲撃は、トランプ支持者の行動を参考にしたかのようだ。首謀者は、「ブラジルのトランプ」と呼ばれたボルソナロ前大統領の支持者たち。昨年秋の大統領選での敗北を認めず、抗議デモを続けているうち、暴徒化して大統領府と最高裁を含め、三権の建物を襲撃した。

 不都合な事実から目を背け、暴力を辞さない「トランプ主義」が、ブラジルにも広がっている証しだと言えよう。

 ボルソナロ氏自身は米国滞在中だが、責任は免れない。しかも息子は、トランプ氏のフロリダ州の邸宅を訪れて面会している。側近の元首席戦略官バノン氏とも協議していた。

 バノン氏は襲撃開始後も、あおるような投稿を繰り返し、暴徒を「自由の戦士」と称賛していたという。看過できない。

 計画段階で議会襲撃を阻止できた国もある。ドイツだ。政府転覆を狙い、議事堂の襲撃を企てた疑いがあるとして、昨年12月、極右勢力ら25人が逮捕された。司法や保健など政府機関を模した部門に加え、軍事部門まであった。絵空事の計画だと過小評価するのは危険過ぎよう。

 このグループがトランプ主義に毒されていたかどうか、よく分からない。しかし根拠のない思い込みや身勝手な主張に基づく言動は共通している。政府への不満が講じれば、火種が日本でも広がる恐れは否定できない。「他山の石」として、危機感を共有し、民主主義の価値を改めて認識する必要がある。

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