Unconstitutionality of Racial Preferences Stirs Concern about Social Division in US

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人種優遇は違憲 米社会の分断憂慮する

米最高裁が四十五年前から踏襲されてきた判例を覆し、人種を考慮した大学の入学選考を違憲とする判断を下した。社会の多様性を損ね、分断を深めないか、憂慮せざるを得ない。

 黒人やヒスパニック(中南米系)、先住民といった人種的少数派の社会進出を後押しする「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」は、公民権運動が燃え盛った一九六〇年代に導入された。

 教育現場での多様性を確保する狙いもあるが、保守派からは「逆差別だ」と絶えず批判の的になってきた。最高裁は七八年、人種の枠を設ける入試制度は違憲としたが、選考基準に人種を含めることは認めた。

 今回の訴訟は、保守系団体が是正措置の対象外であるアジア系への差別だとして、ハーバード大学などを相手取って起こした。

 最高裁は九人の判事のうち保守派六人の多数決で、是正措置が法の下の平等を定めた憲法に反するとの判断を下した。

 米社会には人種に基づく差別、格差は歴然として存在する。連邦準備制度理事会(FRB)のデータでは、黒人やヒスパニック所帯の平均収入は白人所帯のおよそ半分だ。経済格差は教育格差につながる。この不平等の解消に役立つはずの是正措置を、最高裁は「不公平」と認定した。

 過去に是正措置が禁じられた州では、黒人、ヒスパニックの入学者が減少している。人種を考慮した選考は企業や軍の採用・昇進でも用いられている。定着していた制度が否定されたことで米社会に及ぼす影響は大きい。

 多様性は米国の活力の源泉である。多様性と公平性とをどう両立させていくかは多民族国家の課題だ。同時に差別と格差そのものを是正することも不可欠である。

 ところが最近の最高裁は保守派寄りの判決が目につく。この違憲判決の翌日には、信仰上の理由から同性婚にかかわる仕事を拒んだ業者の訴えを支持し、多くの若者が苦しむ学生ローンの減免を無効とした。昨年は人工中絶の憲法上の権利を見直し、社会に衝撃を与えた。

 司法が党派色に染まって偏った判断を下せば、国民の信頼を失う。社会の対立をあおることにもなる。公正・中立な立場を忘れてはならない。

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