米議会の混乱/ウクライナ支援は続けよ
米下院共和党のマッカーシー議長が解任された。大統領権限の継承順位で副大統領に次ぐ要職である下院議長の解任は米議会史上初めてのことだ。
引き金は9月末に成立した政府のつなぎ予算だった。新年度予算案がまとまらず、政府機関の一部閉鎖が迫る中、11月中旬までの政府予算を賄うため議長が妥協案を出した。これに共和党強硬派が、歳出の大幅削減が盛り込まれず、民主党に協力したとして解任動議を出した。これに民主党も同調する異例の事態となった。
議会運営の混迷が続けば米国の政策遂行が滞り、国際社会にも大きな影響を及ぼしかねない。直ちに議長を選任し、事態を収束させねばならない。
政府機関の閉鎖はぎりぎりで回避されたが、このつなぎ予算にも問題がある。下院共和党の保守強硬派が削減を求めたため、ウクライナ支援が含まれていない点だ。今後、本格的な政府予算案が通らなければ、支援は2カ月程度しか持たない。
共和党は下院の多数派を占めるが、民主党との議席差はわずかだ。そのため一部の強硬派が主張を押し通そうとし、党内の対立を深刻化させている。今回も、来年の大統領選を控えてトランプ前大統領を支持する議員らが歳出削減を執拗(しつよう)に求めた。
新議長選任に向けて、下院共和党ナンバー2のスカリス院内総務らが立候補を表明しているが、強硬派の影響力を排除するのは困難だろう。
米国の支援は、ロシアに対するウクライナの反転攻勢の生命線である。バイデン大統領は支援継続を表明したが、議会が予算案を可決するよう、説得に力を注ぐ必要がある。
ロシアの侵攻が始まった昨年2月以降、米国は軍事支援だけでウクライナに439億ドル(約6兆5千億円)以上を拠出した。紛争の長期化で、米国を含め各国に「支援疲れ」が出ている点は否めない。
だがここで米国が手を引けば同調する動きが現れかねず、結果的に他国の主権と領土を侵すロシアを利する。自由と民主主義を掲げ、国際社会を率いる立場を自任するのなら、米議会指導部は内向きの政争に終止符を打つべきだ。
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