Silence Is Golden

 

 

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物言えば唇寒し

「移民問題よりも暴力や貧困の方が大事な問題よ」

2024年米大統領選の関連取材で訪れた西部アリゾナ州の国境の町ユマ。医療関係に従事する34歳の女性がこう語っていた。女性は無党派で、大統領選では移民政策は重視せず、候補者を選ぶという。

ユマは米国を目指す不法移民の入り口となってきた町で、移民問題への不満が鬱積していると思っていたが、そうではない人の声が想像よりも多かった。

60代ながら配車大手ウーバーでドライバーを務める女性は「移民問題で治安が悪いということはない」と話した。彼女自身、深夜まで働いているという。

もちろん、不法移民に強い不満を持つ人もいる。共和党寄りだと語る71歳男性は「バイデン大統領は国境に関して何の対策もしない」と憤り、トランプ前大統領に投票すると語気を強めていた。国境の町でも意見はさまざまだ。

そんな中、記者が昼食のために入ったレストランで働く27歳男性の言葉が耳に残った。「不法移民をひそかに雇って商売をしている人もいる。皆が移民問題を本音で話しているとは思えない」。国境問題を抱えるアリゾナで安易に本心を語れば批判される恐れもある。物言えば唇寒し-。移民問題の世論を見定める難しさを痛感した。(坂本一之)

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