<社説>ガザ安保理決議 米は人道危機許すのか
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの戦闘は、激しさを増す一方だ。
ガザ側の死者は2万人を超えた。イスラエルはイスラム組織ハマスの壊滅という目標を達成するまで戦闘を続けるとしている。
こうした中、国連安全保障理事会はガザへの人道支援の強化を訴える決議案を採択した。
イスラエルを擁護する米国は拒否権を行使せず棄権した。ただ、採決を4日連続で延期して「敵対行為の停止」などの文言を盛り込まないよう働きかけていた。
停戦圧力としては極めて弱く、骨抜きにされたと言うほかない。
イスラエルの蛮行をやめさせるには国際社会の圧力が不可欠だ。とりわけ軍事支援を行っている米国の影響力は大きい。
一刻も早く人道危機を終わらせるため、米国はイスラエルに停戦を強く訴えねばならない。
ガザ情勢を巡って安保理決議が採択されたのは2回目だ。前回は戦闘休止を決議し、実際に1週間の休止にこぎ着けた。今月8日の即時停戦を求める決議案は、米国が拒否権を行使して阻んだ。
今回の決議に関して、イスラエルのネタニヤフ首相は米国のバイデン大統領との電話会談で、停戦圧力を弱めたことに謝意を伝えた上で、戦闘の継続を明言した。
ガザ南部の地上侵攻を拡大しハマス指導者の潜伏先とみられる地下施設への作戦を続けるという。
イスラエルは北部でもハマス拠点があるとして病院を攻撃し、多くの民間人を殺害した。だがその後も明白な証拠を示していない。
難民キャンプなどへの攻撃も続けている。これでは民間人を虐殺しているだけではないか。
バイデン氏はネタニヤフ氏に民間人の保護を訴えつつ、戦闘休止は求めなかった。人道危機を容認していると言わざるを得ない。決議には日英仏も賛成した。孤立していることを自覚するべきだ。
世界食糧計画(WFP)などによると、ガザ人口の93%に当たる約208万人が「危機的」以上の深刻な飢餓にある。
人道危機は極めて深刻だ。直ちに停戦し、援助物資を搬入する必要がある。
インド洋で、日本企業所有のタンカーが無人機の攻撃を受けた。米国防総省はハマスやイエメンの武装組織フーシ派を支援しているイランが攻撃したとしている。
中東各地への拡大が懸念される。これ以上激化させないため各国は外交を尽くさねばならない。
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