Urge the Approval of US Steel Acquisition Based on Alliance

<--

<主張>USスチール買収 同盟踏まえ米の承認促せ

日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画に関する最終判断は、11月5日の米大統領選後に持ち越されることになった。

買収計画を審査している対米外国投資委員会(CFIUS)に対し、日鉄が再申請することが認められた。今月23日とされていた審査期限は90日間延長される。

CFIUSは安全保障上の懸念があるとの理由から、計画を承認しない勧告をするとみられていた。ひとまず結論が先延ばしされることは好材料だ。日鉄はこの間に懸念を払拭できるよう全力を挙げる必要がある。

買収計画を巡っては、全米鉄鋼労働組合(USW)が一貫して反対してきた。労組票を取り込みたい民主、共和両党の大統領候補は、ともに買収に否定的な考えを示している。バイデン米大統領も買収阻止へ最終調整に入ったと報じられていた。

大統領選後に政治的風圧が和らぐ保証はないが、米国が同盟国日本の企業が絡む案件で安保への懸念を持ち出すことはおかしい。日本政府も米国への働きかけを強めるべきだ。

買収が実現すれば、日鉄の先端技術を共有し、USスチールの競争力を高める効果が期待できる。世界の粗鋼生産の過半を占める中国企業に対抗する手立てでもあり、経済や軍事の基盤となる鉄鋼を米国内で安定的に生産することにも資する。逆に買収を阻止すれば中国を利することになる。こうした点を日鉄は粘り強く訴えるべきだ。

これまで米大統領が外国企業による買収阻止を命じたケースの多くは中国企業だった。日本企業では例がない。日米両政府は覇権を追求する中国を念頭に置き、半導体などの幅広い分野で経済安保上の協力を進めている。鉄鋼分野だけは連携できないというのは納得できない。

CFIUSは、安保に関わる鉄鋼の国内生産が減ることを懸念しているとされるが、日鉄は買収後も工場を閉鎖せず雇用も守ると訴えてきた。日米の経済団体は連名で審査への政治的圧力に懸念を表明した。こうした主張を踏まえるべきである。

日本政府はこれまで内政干渉などを理由に買収計画への表立った支援は控えてきたが、買収が頓挫すれば日米の信頼関係にも影響しかねない。次期首相はその点を十分に認識して積極的に対応すべきである。

About this publication