<主張>米大統領選 投開票の混乱回避重要だ
米大統領選の投開票日まで1カ月となった。民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領が競り合い、激戦州の有権者の動向に注目が集まっている。
接戦となった過去の米大統領選では、集計の方法や投票自体の適切さなどへ疑義が出て法廷闘争となり、勝敗の確定が大幅に遅れたことが幾度もあった。今回も同様の事態が起きるのではと懸念されている。
決着のつかない状況が長引けば、米国政治の混乱と分断が深まるばかりとなる。次期大統領が確定しなければ、国際社会へも悪影響が及びかねない。
ロシアによるウクライナ侵略、緊迫する中東情勢、中国による南シナ海の沿岸国や台湾への威圧的行動など世界の平和と安定が脅かされている。世界の情勢は米国の政治空白を許す状況にはない。
大接戦であっても米国が大統領選を自由、公正にやり抜くことは極めて重要である。
激戦州の知事ら当局者や民主、共和の両陣営には、まっとうな選挙プロセスが確保されるよう綿密な準備と実施を求めたい。選挙不正にはもちろん厳格に対処する必要がある。
共和党候補だったブッシュ氏(子)と民主党副大統領だったゴア氏が戦った2000年の大統領選では、フロリダ州の得票差が僅差だったため両陣営による法廷闘争となった。決着は連邦最高裁に委ねられ、ゴア氏が敗北宣言をしたのは投票日から1カ月以上もたっていた。
20年の前回大統領選は、新型コロナウイルス禍の中で行われた。感染を避けるため郵便投票が広がった。トランプ陣営は郵便投票への不信などを訴えて各州で裁判を起こした。
今回の大統領選をめぐり、ロイター通信などの今夏の世論調査では回答者の8割以上が、過激派が投開票後に暴力行為を起こすと危惧していた。別の調査では、7割近くが、トランプ氏が大統領選の結果を受け入れる「準備ができていない」との見方を示した。このような混乱はあってはならない。
さらに、中国やロシア、イランなどの米大統領選への介入にも警戒を強めたい。専制国家はインターネットを通じた偽情報の拡散や暴力行為の扇動、民主・共和陣営相互の憎悪をかきたてようと狙っているからだ。
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