<社説>米大統領選/混乱阻止は両党の責務だ
米大統領選は、11月5日の投票まで20日を切った。民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の攻防は大接戦となっている。
勝敗の鍵を握るのは、両党の支持が拮抗(きっこう)する「スイング・ステート(揺れる州)」だ。「ラストベルト(さびた工業地帯)」と呼ばれる中西部ミシガン州や、メキシコと長い国境を接する西部アリゾナ州などの7州がそれに当たり、両陣営とも現地入りを重ねる。
インフレの後遺症に苦しむ国民は多く、物価対策への関心は高い。どちらの候補も減税による家計負担の軽減策など「ばらまき」的な公約を競い合う。中南米からの不法移民への対応や、人工妊娠中絶の是非も主要な争点である。
しかし、政策論争よりも個人攻撃が目立つ選挙戦は、つまるところ「トランプの復活か阻止か」が最大の争点であることを浮き彫りにした。格差拡大を背景にした米社会の分断は、国家のあり方をめぐる価値観の対立を激化させているようだ。
黒人女性でアジア系のハリス氏は、多様性の象徴でもある。検察官出身らしく、法の支配や自由、民主主義を守る姿勢を強調してきた。バイデン大統領の国際協調路線を引き継ぐとしている。
対するトランプ氏は米国第一主義を掲げる。白人保守層を意識した訴えが多く、選挙中も移民排斥や女性蔑視の発言を繰り返している。刑事裁判で有罪評決を受けるなど一発退場となってもおかしくないが、支持者は拍手を送る。
選挙では口汚い中傷も飛び交い、これが民主主義の超大国かと理解に苦しむ場面は多い。中でも対立をあおる前大統領の責任は重大だ。ただ、米国第一が熱狂的に支持される状況を、一時的なブームと軽視すべきではないだろう。
米社会の内向き志向を反映して、外交や安全保障に関する議論が深まらないのは残念だ。イスラエルは中東に戦火を広げ、ウクライナ戦争は長期化している。世界の平和に米国がどのような役割を果たすのか、日本をはじめとする同盟国との関係をどう維持し深化させるのか。両候補はもっと語る必要がある。
前回2020年の選挙では、党派対立から各地で投票妨害などが相次いだ。トランプ氏は敗北を認めず、支持者が連邦議会を襲撃する異常事態を招いた。混乱が繰り返されるようなことになれば、米国の民主主義への信頼は損なわれる。国際社会に与える影響も無視できない。
民主、共和両党は、公正な選挙の実施はもち
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