The US Steadily Prepares for Security in Asia

 

 

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[社説]米国はアジアの安全保障の備えを着実に

バイデン米政権と米議会が超党派の代表団をそれぞれ台湾に派遣し、総統選後も変わらず台湾への関与を続ける方針を鮮明にした。もっとも、バイデン大統領は「台湾の独立を支持しない」と発言し、中国への配慮もみせた。

中国の習近平指導部が台湾への威圧を繰り返す現下の情勢で米国が関与を続けるのは当然だが、台湾に自制を促したのも緊張を高めないうえで適切だ。米国は台湾海峡の平和と安定に向けて中台双方に目配りしつつ、万が一への準備を着実に進めてほしい。

米政府の非公式代表団は元政権高官、米議会は下院の台湾議連の共同議長2人で、いずれも超党派のメンバーで構成する。総統選で当選した与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳氏らと面会し、台湾への協力を維持すると伝えた。

ウクライナ戦争と中東危機の二正面で対応に追われる米国が、台湾有事の際に遅滞なく動けるのか。内外ではこんな懸念がくすぶる。米国がこの数年で売却を決めた台湾への武器の供給は遅れ気味だ。米シンクタンクによると、遅れは最新型の戦闘機などおよそ3兆円に及ぶ。有事への備えに影響しないか、気がかりだ。

昨年末に成立した米国の国防権限法には米台連携を促進する取り組みが盛り込まれている。米軍による台湾軍への訓練拡充やサイバー防衛活動への支援がその一例だ。米国が台湾の自衛力維持を支援すると定めた台湾関係法に基づき、こうした措置をなるべく早く実施すべきだ。

アジアでの中国の強権的な振る舞いは台湾に対するものだけではない。南シナ海で最近、とりわけ目立つのがフィリピンへの圧力だ。昨年から中国船がフィリピン船に放水銃を発射したり、衝突したりする事案が相次いでいる。

米軍とフィリピン軍は今月、この海域を合同でパトロールした。フィリピン政府は日本ともパトロールを実施したい意向を示している。日米とオーストラリア、フィリピンは4カ国による共同訓練の実績がある。自衛隊は可能な範囲で協力の拡大を探るべきだ。

米国が安全保障面で抑止力を高めつつ、中国と信頼醸成をはかるのは不測の衝突を避けるうえで意義が大きい。その意味で、米中が今月から防衛当局の対話を再開したのは歓迎すべき動きだ。中国が拒否してきた国防相の対話も早期に実現してほしい。

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