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Posted on October 31, 2011.
世界経済の成長に必要なお金を循環させる役割を担ってきた米ウォール街が、リーマン・ショック後の新しい金融業の姿を見つけられないでいる。米金融機関の2011年7~9月期決算にそうした苦悩がよく表れていた。
ゴールドマン・サックスは四半期としては約3年ぶりに赤字決算となった。収益源だった債券などの売買業務が不振だったうえ、未公開株への投資から多額の損失が発生した。こうした市場取引で収益が上げられなかったのは、相場の変動といった一時要因だけでなく、規制強化も影響している。
昨年成立した米金融規制改革法では、金融機関の自己売買が禁じられる方向にある。規制に対応するため、ゴールドマンをはじめとする大手金融機関は、自己売買部門を大幅に縮小した。
危機の再発を防ぐという観点からは望ましい動きだ。しかし、経済に大量のリスクマネーを送ってきた米大手金融機関が縮み志向から抜け出せないようだと、実体経済に影響が出かねない。
証券業と商業銀行を兼営している総合金融機関への逆風もやまない。企業向け融資の焦げつきは縮小傾向にあるが、失業率の高止まりなどによって個人関連の業務が利益を生みにくくなっている。
バンク・オブ・アメリカは9月末の総資産が2兆2200億ドルと1年前に比べ5%減り、2兆2900億ドルだったJPモルガン・チェースに全米最大の座を明け渡した。傘下に持つ大手住宅ローン会社の損失処理を進め、資産を圧縮した結果だ。
米連邦準備理事会(FRB)は保有資産の規模を変えずに長期国債の比重を高めるツイス
ト・オペを導入した。長期金利の低下を促し景気刺激を狙うものだが、銀行にとっては長短の金利差の縮小に伴い融資の利ザヤが薄くなってしまうという問題がある。
欧州だけでなく米国の金融システムも変調をきたすと、世界景気への悪影響は免れない。米金融の構造変化への目配りも必要だ。
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