Approaching US Midterm Elections: Debate Policy Without Conflict

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論説 : 近づく米中間選挙/抗争にせず政策論議を

 米中間選挙が2カ月半後に迫った。オバマ大統領の人気が低迷し与党民主党は苦戦、野党共和党が上下両院で多数を制する勢いを見せている。オバマ政権の求心力が一気に衰え、2年後の大統領選挙をにらみ両党が抗争に明け暮れることも懸念される情勢だ。

 今、米国では移民制度改革や人種間融和に加え、環太平洋連携協定(TPP)交渉、中東、アジア外交など内外の課題が山積する。有権者が政策論議を重ねて11月4日の投票に臨むことを期待したい。

 米国では4年に1度ある大統領選挙の中間の年に下院全435議席と上院の約3分の1(今年は補選も含め36議席)が改選される。下院は共和党が過半数を維持する見通し。焦点は民主党(民主系無所属含む)55議席、共和党45議席となっている上院の行方だ。

 大半の州で8月中旬までに予備選挙が終了し両党候補が出そろい、米メディアは共和党が上院で勢力逆転に必要な6議席以上を上積みする見通しを報じている。背景には極端な主張を掲げる保守派運動「ティーパーティー(茶会)」が退潮、共和党の主流派が幅広い支持を得たことがある。

 共和党は2年前の上院予備選で茶会系候補が躍進したものの、妊娠中絶禁止などの主張が無党派層に嫌われ、本選挙で民主党に多数派維持を許した。

 また2013年秋には党指導部と保守派の抗争が激化したため、暫定予算成立が遅れ、16日間に及ぶ政府機関の一時閉鎖を招いた。その結果、米国民の間で「共和党嫌い」が急増し、指導部は党の団結回復に腐心してきた。

 今年の予備選では南部ケンタッキー州のマコネル院内総務など共和党現職数人が茶会系新人の挑戦をはね返したため共和党から「扇動的な上院候補がいなくなった」(米紙)。さらに医療保険改革、包括的な銃規制の停滞やウクライナ、シリア、イラク情勢の悪化でオバマ氏の支持率が就任以来最低の40%になったことも共和党有利に動いている。

 気になるのは民主党大統領と共和党優位の議会が相対する“ねじれ現象”が現実になった場合の米国政治の行方だ。

 オバマ大統領は今年1月の一般教書演説で、議会に頼らず重要政策を推進する決意を表明。大統領令により連邦政府の契約業者に対して最低賃金の引き上げ、同性愛者への差別禁止などを義務づけた。しかし、共和党の反対に遭って全企業への拡大に必要な法制定を断念した。

 両党の歩み寄りが可能とみられた、不法移民の市民権取得に道を開く移民制度改革には共和党が背を向けた。逆に、共和党に支持者の多いTPP交渉妥結に向け、大統領に交渉内容を一任する法案には民主党から反対の声が上がる。両党が冷静に政策課題を議論する環境は整っていない。中間選挙終了と同時に政治の関心が一気に16年秋の大統領選に向かうことを懸念する。

 来年初めの新議会開会後に、連邦政府による借り入れの法定上限を引き上げた法律の期限が到来する。両党の対応次第で政府機関の一部閉鎖再発の危機も到来しかねない。

 候補者の当落は重要だが、米国の有権者には今後2年間の自国と世界の針路についての真剣な政策論議を望みたい。

(’14/08/23 無断転載禁止)

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