Provision of Cluster Bombs Harms Legitimacy of Support

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クラスター供与 支援の正当性を損なう

バイデン米政権がクラスター(集束)弾をウクライナに供与することを決めた。非人道的な兵器の提供は軍事支援の正当性を損ない、大きな禍根も残す。

 クラスター弾は親爆弾に数十から数百個の子爆弾が入り、空中で破裂した親爆弾から子爆弾が広範囲にばらまかれる。不発弾が多く紛争終結後も民間人、とりわけ子どもが犠牲になる悲劇を生む。ベトナム戦争、イラク戦争、シリアやイエメンの内戦でも使われた。

 非政府組織(NGO)の国際的な連合体「クラスター弾連合」の報告書によると、一九六〇年代半ばから二〇二一年末までの間に、クラスター弾による死傷者は全世界で約二万三千人。うち不発弾による死傷者の方が多く一万八千人余に上る。クラスター弾は無差別殺傷兵器と言ってよい。

 クラスター弾の使用や製造を全面的に禁じる国際条約(オスロ条約)には日本を含む百十カ国以上が加盟するが、米ロ中の三大国をはじめウクライナも非加盟だ。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチはウクライナ、ロシア両国ともクラスター弾を使い、民間人に犠牲者を出しているとして使用をやめるよう訴えている。

 ところがウクライナは通常弾薬が枯渇し、クラスター弾の供与を米国に求めていた。反転攻勢も難航しており、背に腹はかえられないのだろうが、不発弾は戦後復興の大きな障害になる。同胞をも殺傷する危険性をゼレンスキー政権はわきまえるべきだ。

 米国も通常弾薬の在庫が不足してウクライナへの提供に事欠く状況だ。クラスター弾の供与は通常弾薬の増産態勢が整うまでのつなぎの措置であり、不発率の小さいクラスター弾を提供すると、バイデン政権は説明する。

 だが、米政府自身がクラスター弾使用は「戦争犯罪の可能性がある」(前大統領報道官)と批判してきた経緯がある。

 西側がウクライナ支援で足並みをそろえるのは、ロシアの侵略行為という不正義を看過すれば、世界が弱肉強食の時代に逆戻りしてしまうからにほかならない。

 公正を貫くべき局面で倫理を踏み外すような支援を行えば、その道義は色あせてしまう。

 オスロ条約に加盟する西側諸国からも米国への異議が出ている。結束が乱れないかも心配だ。バイデン大統領に再考を促したい。

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