米大統領選 「トランプ登場」に備えよ
米大統領選の民主、共和各党の候補指名をめぐる州の予備選などが集中する「スーパーチューズデー」が行われた。共和党ではトランプ前大統領が圧倒的な強さを示して勝利し、ヘイリー元国連大使は撤退を表明した。民主党は現職のバイデン大統領が圧勝した。
11月の本選は4年前と同様、トランプ、バイデン両氏の対決となる見通しだ。各種世論調査では両氏への支持率はほぼ拮抗(きっこう)している。ただし、本選の勝敗を分けるとされる接戦州ではトランプ氏への支持が上回る傾向にある。どちらが勝利するかはわからないが、米大統領が誰になるかは国際秩序の行方を左右する。
トランプ氏は、大統領在任中も今も、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の国防費負担が不十分だと怒りを示してきた。台湾有事が懸念される中で、日本の防衛努力にも厳しい視線を向けるに違いない。
日本は自国と地域の平和と安全を守るため、どちらが当選しても日米同盟を堅持していく必要がある。トランプ氏と盟友関係だった安倍晋三元首相を日本は失った。政府・自民党は最優先でトランプ氏との関係を再構築してもらいたい。
スーパーチューズデーの段階で本選の対決の構図が固まったのは異例だ。トランプ氏は指名争いよりも現職バイデン氏に照準を合わせている。
懸念されるのは、このような情勢が、侵略者ロシアに抗戦するウクライナへの支援を滞らせていることだ。
米上院は先月、ウクライナ支援を含む約950億ドル規模の緊急予算案を可決した。一方、共和党が多数派の下院は可決の見通しが立っていない。緊急予算案に反対するトランプ氏が、承認阻止に向けて所属議員に影響力を行使している。
バイデン氏への対抗姿勢を示すためかもしれないが、ウクライナ支援を滞らせては危険だ。ロシアが有利になれば、中国など「力による現状変更」を狙う専制国家が勢いづくからだ。
77歳のトランプ氏は米連邦議会襲撃事件など4件で起訴されている。81歳のバイデン氏は仏独首脳の名前を言い間違えるなど記憶力に疑問符がつく。大統領としての資質を問う声が向けられる両氏には、こうした疑念を払拭する論戦を期待する。
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