Harris’ Speech: Discuss Security in Your Own Words

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<主張>ハリス氏の演説 自らの言葉で安保を語れ

米民主党の全国大会で、ハリス副大統領が大統領候補指名の受諾演説を行った。

ハリス氏は「過去の分断を乗り越え、新しい道を進む機会だ」と述べ、中間層への手厚い支援を訴えた。共和党候補のトランプ前大統領の政治姿勢を非難し、対決色をあらわにした。

景気や移民問題など米国民が関心を寄せる内政問題や対立候補の批判が演説の中心になるのはやむを得ない。

だが、米国は最も大きな経済力と軍事力を有する国だ。ハリス氏には自身の政権で国際秩序をどのように守っていくか、見識や政策を明確に語ってほしかったが期待は外れた。

ハリス氏が、ロシアのウクライナ侵略について「北大西洋条約機構(NATO)とウクライナを力強く支え続ける」と表明したのは妥当だ。

パレスチナ自治区ガザ情勢をめぐっては、イスラエルの自衛権行使を支持しつつ、「今こそ人質解放と停戦で合意するときだ」と述べた。言うは易(やす)しだが、これだけではイスラエルを支持する側も非難する側も納得すまい。

最も残念だったのは、ハリス氏が「インド太平洋」や「台湾海峡」の平和と安定に強い関心を有していると示す言葉が発せられなかった点だ。

中国については、宇宙関連やAIなどの先端技術分野で「中国との競争に打ち勝つ」と述べただけである。

台湾海峡や南・東シナ海などのインド太平洋は、民主主義と専制主義がせめぎ合う国際秩序の行方を左右する現場だ。ハリス氏は、軍事的、経済的威圧を強める中国の脅威を抑止する決意を示すべきだった。

北朝鮮については、金正恩朝鮮労働党総書記と「うまくやる」と述べたトランプ氏を批判する文脈で、金氏のような「独裁者には迎合しない」と語った。そうであれば、中国の習近平国家主席とどう対峙(たいじ)するつもりなのか。

ハリス氏は副大統領として外交や軍事に関わった経験がほとんどなく、米有力紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が「謎の最高司令官」と題する社説を掲げ、懸念を示しているほどだ。ハリス氏には今後の論戦で専制国家がつけ込むすきのない外交安保政策を語ってもらいたい。

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