社説:GM国有化 再生への道のりは長い
ゼネラル・モーターズ(GM)が連邦破産法の適用を申請した。日本の民事再生法と同様の手続きをとるとはいえ、世界最大の自動車会社として君臨してきたGMが破綻(はたん)し、国有化されるというのは、衝撃的なことだ。
部品メーカーや系列の販売店網なども含め、GMが抱えている雇用は巨大だ。破綻となると、経済に対する打撃は大きい。
米政府はGMに対し、昨年末から巨額の資金支援を行うとともに、自主的な再建を促してきた。しかし、労組や債権者との調整は難航を続けた。その結果、1カ月前のクライスラーと同じ道をGMもたどることになった。
すでに、傘下のドイツのオペルはカナダの自動車部品メーカーに売却されることになった。ただし、GM本体の再生はそう簡単ではない。
クライスラーの場合は、イタリアのフィアットへの売却手続きがとられれば、破産法による処理から離脱できる。しかし、GMを丸抱えで買収してくれるところはないだろう。そのため、採算性の悪い部門を売却し、ブランドを大幅に削減する形で再編を行う方針だ。
日本への影響も避けられない。GMに供給している日本の部品メーカーも多い。米政府はGM本体だけでなく部品メーカーなどにも支援を行うというが、米国外からの部品調達も多い。内外無差別で対応するのが筋だろう。
金融危機によって自動車販売が激減したのがGM破綻の直接の原因だが、時間の幅を拡大してみると、魅力のある車をつくれず、日本車やドイツ車に市場を奪われたことが響いた。短期的な利益を追求し、利益率が高い大型車依存の構造を変えられず、環境技術でも後れをとった。
再生の作業を加速し、一刻も早く政府の管理下から離れ自立できるようにするという。しかし、規模が巨大なだけに今後も曲折が続きそうで、新生GMの誕生は容易ではない。
また、これをきっかけにした自動車産業の再編も注目点だ。中国やインドなど新興国の自動車メーカーの台頭という新たな要素も加わって、自動車産業の世界地図は大きく塗り替わることになるかもしれない。
GM破綻の究極的な原因は、魅力のある車をつくることができなかったところにあるわけだが、この点には日本の自動車産業も留意してもらいたい。
かつては多くの人が自動車に夢を感じていた。しかし、最近は若い人を中心に自動車への興味が薄れている。魅力ある車づくりへの感性の劣化がないか、自らの足元を見直すことも必要だ。
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