社説:G8サミット 核廃絶へ日米の連携を
オバマ米大統領が「核兵器なき世界」をめざすと演説してから約3カ月。イタリア中部で開かれた主要8カ国(G8)首脳会議は、核のない世界への条件整備に努めることで一致した。6日に米露首脳が新たな核軍縮条約の枠組みに合意したことも含めて、世界に核廃絶の機運が高まっていることを歓迎したい。
もちろん、機運だけでは核軍縮は進まない。それでも、G8を構成する核保有国の米露英仏が同じ目標(核廃絶)に向けて足並みをそろえた意義は大きい。G8に属さない中国も同調してほしい。核拡散防止条約(NPT)で核兵器保有を認められた、この5カ国の協調なしに「核なき世界」の実現は不可能である。
首脳声明は、核実験全面禁止条約(CTBT)の早期発効に向けた努力を促し、核兵器に使われる高濃縮ウランやプルトニウムなどの生産禁止をめざす「兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約」の早期交渉開始も強く支持した。核問題への対応に積極的で、様変わりのサミットになった感がある。
というのも、ここ10年ほど米国の核軍縮や核管理の動きは鈍かったからだ。民主党のクリントン政権が推進したCTBTは米議会が99年に批准を否決し、次のブッシュ共和党政権はCTBTを棚上げする「死文化」を広言した。90年代にクリントン大統領が提唱したカットオフ条約も実質的交渉には至っていない。
封じられた動きが、弾みを取り戻しつつあることを評価したい。オバマ大統領は来年3月、「世界核安全保障サミット」をワシントンで開くことを明らかにした。中曽根弘文外相も、来年5月のNPT再検討会議前に日本で核軍縮・不拡散に関する国際会議を開く意向を表明している。核兵器使用の「道義的責任」に言及したオバマ政権と、唯一の被爆国・日本が核軍縮・核廃絶に連携するなら喜ばしいことだ。
核兵器を全廃するには、NPTの枠外で核兵器を保有したり保有が疑われる国々(インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)への対応も重要だ。核実験やミサイル発射を繰り返し、ひたすら脅威をあおる北朝鮮をG8首脳が強く非難したのは当然である。拉致問題で北朝鮮の対応を促す宣言が出たことも評価したい。
今後の課題は、うたい上げた理念をオバマ政権が着実に実践することだろう。日本が国連総会に提出する核兵器全廃の決議案は94年から毎年採択されているが、米国や北朝鮮など数カ国は昨年も一昨年も反対した。核問題の決議で米朝が同じ側とは奇妙だ。オバマ政権がこの決議に賛成することも、崇高な理念を実践する一歩ではないか。
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