社説2 インド重視示した米政権(11/26)
米国のオバマ大統領は就任以来最初の国賓として、インドのシン首相をワシントンに迎えた。オバマ政権のアジア政策が中国とパキスタンに傾斜しているとの懸念がインドで強まっていたこともあって、インド重視の姿勢を目に見えるように示す狙いがあった。
首脳会談を終えて発表した共同声明にインドへの配慮がうかがえた。ムンバイ同時テロからやがて1周年というタイミングをとらえ、事件の首謀者を裁判にかける必要性を強調した。首謀者たちが拠点にしていたとされるパキスタンの政府に事件解明の努力を促す意味があり、インド側は評価している。
米側は主に経済面で実利を得たといえそうだ。17日の米中首脳会談と同様に、地球温暖化対策やエネルギーの分野での協力で幅広い合意ができた。ブッシュ政権時代に結んだ原子力協定を早期に実施する方針も確認した。
オバマ大統領は米経済の再建と雇用創出の起爆剤になると期待する分野で、中国に続いてインド市場にも足がかりを築いたといえる。ただ、両首脳とも二酸化炭素(CO2)排出量の具体的な削減目標に踏み込まなかったのは残念だ。
両首脳は経済政策について財務担当閣僚会議を年に1度開くことでも合意した。1990年にインドが開放的な経済政策に踏み出してから、米印経済関係は飛躍的に拡大してきたが、さらに弾みがつきそうだ。
残念ながら見劣りするのは、日本とインドの経済関係だ。日本はインドへの最大の政府開発援助(ODA)供与国だが、民間の交流の活性化にあまりつながっていない。人の交流のための枠組みづくりなど、民間を後押しする政策をのぞみたい。
インドが核拡散防止条約(NPT)に署名していないため原子力協定も見送っている。シン首相が核実験をしないと表明したことを踏まえれば、外交努力で民生分野の協力に道を開くことは可能だろう。
鳩山由紀夫首相が掲げる「東アジア共同体」構想は米国とともにインドの位置づけがはっきりしない。インドは中国に次ぐ有望市場である。もっと広い視野から国益を追求していく必要があるのではないか。
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