実効ある検証措置が要だ 米ロ核交渉越年
年内締結を目指していた米国とロシアの新たな核軍縮条約の署名が来年に先送りされることになった。
戦略核弾頭やミサイルなど核兵器運搬手段の削減数など大枠では既に合意しているが、弾頭や運搬手段の数え方や、確実に削減されたかを確認する査察・検証体制のあり方など技術的な問題をめぐり折り合いがつかないためだ。
新条約は、1991年に米ロ(当時はソ連)間で署名され、今年12月5日に失効した第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約となるものだ。
新条約の成否は今後の世界の核軍縮の流れに大きな影響力を持つ。オバマ米大統領が目指す「核兵器のない世界」に向けた具体的な一歩を踏みだすためにも、米ロ両国には新条約の早期締結、早期発効への努力を強く促したい。
ストックホルム国際平和研究所の推計や米国務省の発表資料によると、配備済みの戦略核弾頭数は米国が約2200、ロシアが約2800で、弾道ミサイルなど運搬手段の総数は米国が約1200、ロシアが約820とされる。
米ロ両国は7月の首脳会談で、これを新条約発効後7年以内に(1)核弾頭数の上限を1500-1675(2)弾道ミサイルや潜水艦発射ミサイル、爆撃機など運搬手段を500-1100‐とすることで大枠合意している。
目標としていた年内の最終合意に至らなかった背景には、新型戦略ミサイル開発などで米国との核戦力格差を縮めたいロシアと、厳格な核兵器検証体制にこだわる米国の思惑の違いがある。
具体的には、ロシアの新型ミサイル開発の製造・実験データを査察・検証する体制を求める米国にロシアが抵抗していることや、ロシアが米国のミサイル防衛(MD)計画推進に何らかの歯止めを求めていることなどが指摘されている。
ロシアにとっては、新条約で米国にミサイルの技術水準を知られる体制を認めることは、抑止力維持のためにも避けなければならないという危機感がある。
一方の米国が検証体制にこだわるのは、START1後に締結した米ロ核削減条約が、二つとも実効性なく終わったという苦い経験があるからだ。
2002年、ブッシュ政権下で締結した削減条約(モスクワ条約)は検証措置がないため有名無実化した。1993年にクリントン政権が締結したSTART2は、ロシアへの譲歩で連邦議会の承認が得られず、発効には至らなかった。
今回のSTART1後継条約で、オバマ政権はその轍(てつ)を踏んではならない。核弾頭・核兵器の削減を確実に前進させるためには、削減状況を目に見えるものにする検証措置が不可欠だ。
交渉が越年しても、米ロ両国には厳格な相互検証が可能な条約体制を実現してもらいたい。それが世界の核軍縮の流れを加速させるはずだ。
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