国防総省が発表したオバマ政権初の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)報告は、中国の軍拡の意図や勢いに正面から疑念を提示し、同盟国との連携による対応を強く呼びかけたのが特徴といえる。
オバマ政権として一定の対中協力にも配慮しつつ、安全保障面で警戒と備えを高める方向へかじを切ったと受け止めるべきだろう。
日米同盟を「基軸」とする鳩山由紀夫政権もこうした認識を共有し、同盟深化協議に正しく反映させる必要がある。首相は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題の早期決着によってその第一歩を踏み出すべきだ。
QDRは20年単位の長期国防戦略指針だ。1997年に始まり、今回で4度目になる。国防戦略の基本を「二正面戦略」から、テロや核拡散など多様な事態への即応態勢に転換し、中国、インドの台頭など21世紀の安全保障環境の変化への適応も掲げている。
同盟国として注目すべきは、地球規模で存在感を高める中国の軍拡や意図に触れた記述だ。
国際社会での中国の建設的役割に期待する一方で、中距離ミサイル、攻撃型原潜、広域防空、サイバー・宇宙攻撃能力、空母建造など異例といえる「長期かつ包括的軍拡」の具体例を挙げ、「長期的な意図について数多くの疑問がある」と明確な警戒感を示した。
名指しは避けつつ、台湾有事の際に中国軍が米軍来援を阻止する「接近阻止能力」への対応も重点項目に挙げている。
米国は北朝鮮、イランの核問題や経済などで中国の協力が欠かせない面もあり、「脅威」「ライバル」などの表現はない。だが、昨年の「中国の軍事力」報告で「透明性の欠如」を指摘したのに続いて、最近の台湾への防衛武器売却決定などと合わせると、脅威認識を戦略的に強くにじませた。
日韓などアジア同盟国との連携や協力強化の必要を強調した。日米間では「合意された米軍再編ロードマップの履行を引き続き進める」と明記しているのも、こうした文脈で理解し、協力する必要があることはいうまでもない。
日米高級事務レベルの同盟深化協議が始まったが、普天間問題で迷走を続ける鳩山政権は対中認識と同盟戦略について米国とどこまで共有できているか。同盟を真に深め、日本の安全と国益を高める行動を急いでもらいたい。
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