Nobody Believes the Prime Minister

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5月末決着 首相の言葉を誰も信じない(5月15日付・読売社説)

 米軍普天間飛行場移設問題で鳩山首相が約束した「県外移設」に続き、「5月末決着」も事実上反故(ほご)になっている。

 首相は13日、「6月以降も努力する」として、5月末決着の断念を表明した。それが、また14日には、月末決着へのこだわりを示したりもしている。

 こうした右往左往ぶりをみて、首相の言葉を信じられなくなった人も多いだろう。「5月末決着」を信じている国民は、ほとんどいるまい。

 首相は、普天間移設問題の「決着」の意味について、「沖縄、移設先の自治体、米国、与党すべての同意」を挙げてきた。

 結局は、それぞれの同意取り付けに、ことごとく行き詰まり、「決着」という言葉の定義を変換させざるをえなくなった、というのが実態だろう。

 指導者には、こじれた問題の解を見いだす力や、それを実行に移す決断力が不可欠だ。首相にはこれらの資質が不足している。

 昨年12月、首相は決断の好機を迎えながら、社民党の「連立政権離脱」カードで揺さぶられると、結論をあっさり先延ばしした。

 平野官房長官を仕切り役に、政府・与党の「沖縄基地問題検討委員会」を作ったが、安全保障政策で相いれない社民党との間で合意できるはずもない。

 沖縄県や鹿児島県・徳之島などとの話し合いの進め方も、稚拙ぶりが際立っている。

 今年1月の名護市長選で移設反対派が勝利すれば、問題が暗礁に乗り上げてしまうことは、誰しもが予測できたことだった。

 あげく、反対派の市長が当選すると、平野長官は選挙結果を「斟酌(しんしゃく)する必要はない」と発言し、地元の不信を買った。

 首相の沖縄訪問と同様、平野長官の鹿児島入りも、初めからボタンを掛け違えたままだった。説得どころか、関係者の反発を増幅させている。

 首相は、オバマ米大統領との信頼関係構築に失敗した。大統領とまともな会談も出来ないのでは、交渉が進捗(しんちょく)するわけがない。

 関係閣僚が勝手な発言をし続けたのも、いただけない。「政治主導」の名の下、過去の経緯に詳しい官僚組織を交渉から外してきたことも、解決を困難にした。

 こうした深刻な事態を招いた首相はもちろんのこと、平野長官の政治責任も重大である。どう責任をとるつもりなのか。

 政府・与党が今の延長線上で作業を続けても展望は開けまい。

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