Keeping the Nuclear Non-Proliferation Treaty Alive

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NPT閉幕/成果を次の行動に生かせ 

 崩壊寸前だった核不拡散体制がこれで維持できる。国連で約1カ月にわたって開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、そんな期待を抱かせるような成果を残して、きのう閉幕した。

 全加盟国が「核兵器なき世界」の実現を決意することなどを約束した最終文書を10年ぶりに全会一致で採択したのである。

 核廃絶への具体的な道筋は示せなかったが、何の文書も採択できず決裂した前回5年前より大きく前進した。この合意を、NPT体制の再構築につなげるべきだ。

 最終文書の柱となる行動計画は、核軍縮と核不拡散、原子力の平和利用に分け、64項目を挙げている。

 例えば核軍縮では、核保有国にその進展状況を2014年の再検討会議準備委員会に報告するよう要請し、翌15年のNPT会議で次の措置を検討するとしている。

 当初の素案では、核廃絶への行程表作成やそれを検証する国際会議の開催などが盛り込まれていた。だが、「核抑止力はまだ必要」と主張する核保有国が難色を示し、国際会議の開催などは削除された。

 このように、最終文書は成果がみられる一方で、目標期限などがほとんど消え、あいまいな表現になったのは否めない。

 イランや北朝鮮が核開発をやめず、核テロの脅威が広がる中、期限を切った核廃絶には依然、抵抗が強いのだろう。しかし、失敗をまた繰り返せば、NPT体制が崩壊してしまう。そんな危機感から各国が歩み寄り、合意を優先させたといえる。

 最大の焦点だったイスラエルの核問題では、名指しを避けながらも、イスラエルを念頭に中東非核地帯構想に関する国際会議を12年に開催することを明記した。

 前々回10年前の会議で採択された中東非核地帯の創設やイスラエルのNPT加盟を求める「中東決議」を再確認した形だ。

 ただ、米国がイスラエルだけに焦点を当てたアラブ諸国の動きに反発している現状をみれば、先行きは不透明だ。

 中東安定の重要な鍵を握るこの国際会議は欠かせない。イスラエルの核問題が解決しない限り、イランの核問題も解決しない。実現へ向け、対話を重ねてもらいたい。

 最終文書では、核保有国が包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准に取り組むことなども求めている。大切なのは、最終文書をいかに行動につなげるかだ。核廃絶への道を後戻りさせてはならない、その決意と実行がすべての国に求められる。

(2010/05/30 10:14)

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