人民元に募る米国の不満
2010/9/18付
米国のガイトナー財務長官は米議会の公聴会で、中国の通貨・人民元の相場について「上昇ペースは遅く、上昇幅も限られている」と不満を表明した。
中国政府は6月、2年近く続けた人民元の米ドル連動を改めて「柔軟性を高める」と発表した。それから3カ月近くがたったが、人民元の対ドル相場の上昇率は2%弱にとどまっている。
11月の中間選挙を控え、米議会では、米景気や雇用の低迷の一因は人民元を安く抑える中国の政策だとする声が強まっている。夏休みが明けて間もなく中国との経済関係に関する公聴会を開いたことが、米議会の空気を物語る。
ガイトナー長官は議会の不満を踏まえ、人民元について従来より厳しい見方を示したといえる。ただ、今年の米国の輸出が2008年の同期に比べて8%減ったなかで対中輸出は16%増えたと述べ、中国との経済関係がもたらす利益も指摘した。対中制裁法案を模索する議会内の動きをけん制する狙いだろう。
中国が人民元の対ドル相場の大幅上昇を認めないため、ドル安につれ人民元も円に対し下がってきた。韓国もウォン売り・ドル買い介入などで人民元に対するウォンの過度の上昇を抑え、結果として円が独歩高となった。日本が円売り介入に踏み切った根底には人民元の問題がある。
日本の介入について米議会や欧州では批判の声が出たが、ガイトナー長官をはじめ米財務省や米連邦準備理事会(FRB)の関係者は沈黙している。日本の米国債購入が米国の金利を抑える効果を歓迎しているためとみられるが、焦点は円より人民元だとみているからでもあろう。
ガイトナー長官は11月にソウルで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合で「中国の不均衡是正」を主要議題にする考えを示した。一方的な圧力には強く反発する中国も、多国間の枠組みであれば柔軟な対応を示しやすいと期待しているようだ。
中韓をはじめとするアジア諸国の通貨安政策に不満を示していたブラジルなど中南米の途上国は、日本の介入で一段と反発を強めている。人民元をめぐるあつれきは、いよいよ世界的な様相を呈している。
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