尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件は、在沖縄米海兵隊の役割を再認識させる機会となった。
在沖縄海兵隊の定員は1万8000人、今年3月末の実員は1万4879人だ。在日米軍全体の実員5万3082人の3割近くを占める。歩兵、砲兵、航空輸送、後方支援などの部隊や司令部で構成されている。
海兵隊の特長は、短時間で紛争地に駆け付け、戦闘できる即応・機動力にある。民間人救出のような特殊作戦も担当する一方、海空軍のようなミサイル・爆弾による打撃力は持たない。
民主党の小沢一郎元代表は「米軍は第7艦隊だけで十分」などと無理解な暴論を述べたが、実態は違う。海兵隊は、陸海空軍と連携・補完の関係にある。
日本防衛の日米共同作戦では、陸海空自衛隊は「盾」、米陸海空軍・海兵隊は「矛」の役割を担う。特に、尖閣を含む南西諸島などの島嶼(とうしょ)防衛では、海兵隊の機動力が重要な意味を持つ。
日本本土への本格的な上陸侵攻の可能性は当面想定されないが、離島が特殊部隊などに占拠されるシナリオは排除できない。
より蓋然(がいぜん)性が高いのが、朝鮮半島や東シナ海、南シナ海での周辺有事だ。朝鮮半島で紛争が起きれば、海兵隊が在韓米軍の支援に急行するし、米本土からの来援部隊を迎える橋頭堡(きょうとうほ)ともなる。
その即応性は、紛争危険地域に近接する地政学的な重要性を持つ沖縄に駐留することで、担保されている。グアムに移転する海兵隊8000人の中核が戦闘部隊以外となるのは、そのためである。
エドワード・ライス在日米軍司令官は離任会見で、「我々の相手は、海兵隊の能力や、時間と距離の関係を知っている。それが抑止力となっている」と指摘した。周辺有事を未然に防ぐ在沖縄海兵隊の役割を強調したものだろう。
在沖縄海兵隊はこのほか、朝鮮半島有事における日本人の退避活動の支援や、地震・津波などの災害救援の役割も担っている。
日本有事、周辺有事、平時の災害のいずれでも、大切なのは自衛隊と米軍の連携だ。様々なシナリオに基づく共同訓練を実施し、問題点を確認して、改善する、という作業を繰り返す必要がある。
そうした訓練と協議の積み重ねこそが、日米の信頼関係を築き、同盟の深化を可能にする。
菅政権は、在沖縄海兵隊の抑止力の重要性を国民にきちんと説明し、普天間飛行場の辺野古移設の実現に全力を挙げるべきだ。
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