Uranium Enrichment in North Korea

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【主張】北のウラン濃縮 日米韓で脅しはねつけよ 

北朝鮮が、新設の大規模ウラン濃縮施設を核専門家のヘッカー元米ロスアラモス国立研究所長に見せ、「2千基の遠心分離機が稼働中」と主張した。ヘッカー氏は「事実とすれば、年間で最大2発分の核爆弾製造が可能」と報告している。

 これは、北朝鮮が核廃棄に同意した2005年の6カ国協議共同声明だけでなく、北の核実験実施を受けて国連安保理が06年と09年に採択した制裁決議に明白に違反する。

 緊張感を高めて制裁を骨抜きにする、いつもの瀬戸際戦術である。露骨な威嚇に乗じられてはなるまい。

 日米韓の3カ国の結束を固めることが重要だ。米国務省のボズワース北朝鮮担当特別代表は韓国の金星煥外交通商相や前原誠司外相と対応策を協議した。脅しをはねつける断固とした姿勢を示す一方、北の狙いを冷静に分析し、最も効果的な対抗措置を構築しなければならない。

 北朝鮮は昨年9月にも「ウラン濃縮実験成功」と表明しており、今回の事態は予想できた。問題は、北が安保理の制裁決議や日米などの独自制裁によって核関連物資を入手しにくくなった包囲網をかいくぐり、ウラン濃縮を加速させた可能性が高いことだ。

 北朝鮮が過去2回実験したプルトニウム型核爆弾に比べ、ウラン型は起爆が容易で兵器化に向けた実験は必ずしも必要ではない。その代わり、90%以上にまでウランを濃縮する遠心分離機など高度な技術が要求される。しばしば浮上する北朝鮮とイランとの核開発技術協力の疑惑も含め、対北包囲網に欠陥がなかったか、国際社会は検証する必要がある。

 北朝鮮は最近、3度目の核実験の準備ともみられる動きも見せた。金正日総書記から三男、正恩氏への後継体制を固めるには外部からの援助引き出しが不可欠だ。そのためには日米韓を揺さぶるのが効果的と考えたのだろう。

 最近、6カ国協議の議長役である中国の対北融和策が目立つ。23日に北京に向かうボズワース氏は、経済援助が北朝鮮の無法を許す結果を生むと直言すべきだ。

 今年3月に起きた北朝鮮による韓国海軍哨戒艦撃沈事件を受けた米韓合同軍事演習には海上自衛隊もオブザーバー参加した。こうした連携は効果的だ。日米韓は北の脅しにあわててはならない。

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