内部告発サイト「ウィキリークス」が、米国務省の外交公電約25万点の公開を始めた。
文書の多くは機密扱いで、サウジアラビア国王が米国にイラン攻撃を促したとされる報告など、外交問題に発展しかねない情報もある。
クリントン国務長官は、「国際社会への攻撃だ」と非難し、情報を持ち出した者の責任を追及すると述べた。米政府は今後、機密情報の管理体制を見直す方針だ。
インターネット時代に入り、政府や企業から意図的に機密情報が持ち出されるケースが増えた。
ウィキリークスに情報を流した責任者の一人は20代の米兵だという。日本でも、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のビデオや、警視庁公安部のものとみられる国際テロ捜査情報がネットに流出した。
新しい時代に合わせて、政府や企業が機密情報の管理を強化するのは当然である。
ウィキリークスはオーストラリア人のネット起業家が主宰するサイトで、800人以上が運営に関与しているという。機密情報公開については、「真実を知らせるため」と正当性を主張している。
しかし、25万点もの公電を順次ネット上で公開する手法は、個々の文書の内容を精査し、公開の意義や目的、影響などを慎重に検討した上での行動とは言い難い。
国民ののぞき見趣味に迎合するかのような、無責任な暴露と批判されても仕方あるまい。
ベトナム戦争に関する米国防総省機密文書の漏えいなど、内部告発が隠されていた事実を暴き、時代を動かした先例は少なくないが、今回の公開に、そうした公益性は乏しいのではないか。
ウィキリークスは、事前に、ニューヨーク・タイムズなど欧米の一部メディアに公電などの文書を提供していた。公開の宣伝効果を狙ったのだろう。
タイムズは、米政府に独自ルートで文書の真贋(しんがん)を確認した上で取捨選択して掲載した。ウォール・ストリート・ジャーナルは、文書の内容を確認する前に様々な条件をつけられ、断ったという。
どちらも、国民の知る権利を尊重しつつ、機密情報の公開に公益性があるか、政府だけでなく国民も含めた広義の「国益」に反しないかどうか、などを熟慮したうえでの判断だったのだろう。
膨大で多様な情報があふれるネット時代だからこそ、メディアも含め情報を公開する側は、これまで以上に自らに厳しく、抑制的でなければならない。
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