ゲーツ長官来日 普天間先送りは無責任だ
2011.1.14 03:06
来日したゲーツ米国防長官は菅直人首相、前原誠司外相、北沢俊美防衛相と相次いで会談し、今春の首相訪米に向けた日米同盟深化の具体策を進めることで一致した。
だが、同盟の最大の懸案である米軍普天間飛行場移設問題では昨年5月の「日米合意の履行」を確認しただけで、進展がなかったのは極めて残念だ。
中国海軍の外洋進出や北朝鮮の挑発行動が高まる中で日米同盟の立て直しは急務である。普天間問題の解決は同盟の実効性に直接関わる。菅首相は訪米の体裁づくりに終始するのをやめて、日米安保体制の空洞化を食い止める重大な責務がある。
日米防衛相会談では、沖縄県の負担軽減策として米空軍嘉手納基地のF15戦闘機訓練の一部のグアム移転で基本合意した。日米が共同開発中の海上配備型迎撃ミサイルの第三国供与に向けた調整を加速させる方針でも一致した。
北朝鮮問題では日米韓3カ国の連携強化を改めて確認し、先に日米外相会談で合意した共通戦略目標の見直しの加速についても合意した。いずれも同盟を通じた安全保障面の日米協力を促進する上では当然の作業といえよう。
問題は、同盟の抑止力を担保して日本周辺の安保環境の悪化に備えることを目的とした在日米軍再編が一向に進まないことだ。
普天間移設は再編計画の中核で米海兵隊グアム移転や嘉手納以南の米軍施設返還と一体だ。地元の負担軽減と抑止力の強化を満たす「最善の計画」(米政府)であるにもかかわらず、民主党政権下で迷走を重ね、期限通りの履行は極めて難しい情勢となった。
移設推進を強く求めてきたゲーツ長官が今回、日米合意履行の確認にとどめたのは、日本側の事情をにらんで米議会が海兵隊のグアム移転予算を切り詰めてきたことも背景にあるとみていい。
だが、移設を進める主体はあくまで日本である。地元が受け入れるための思い切った「特区」構想を提示するなどの努力を払っているのだろうか。
菅首相は13日も「期限を切った目標は定めていない」と繰り返したが、米側の事情などに乗じて解決を先送りするだけでは、日本の平和と安全は守れない。中身のない訪米に終わらせないように、首相や外相、防衛相は認識を根底から改める必要がある。
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