New Cabinet: Removing Mental Lapses about Futenma Airbase and Safety

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新内閣・普天間と安保 「思考停止」から脱却を

 野田内閣は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を盛り込んだ米国との合意を引き続き推進する方針を示した。安全保障政策に関し、思考停止に陥っていると指摘せざるを得ない。

 大多数の県民が県外・国外への移設、もしくは無条件返還を求める中で、合意の履行は事実上不可能になっているからだ。

 できもしない合意に固執するのは米国の不信を増幅させ、かえって関係を悪化させる。基地があるのだからそのまま押し付けておけばよい―という差別的政策を改め、「県内」よりも実現性のある「県外・国外」移設に向けて動きだすべきだ。

 民主党は2009年衆院選の政権公約で「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と約束していた。玄葉光一郎外相、一川保夫防衛相が「普天間問題で日米関係に一時的な揺らぎがあった」「粘り強く沖縄県民に理解を求めながら対応したい」などと発言する姿を見ると、公約など最初からなかったかのようだ。公約違反を恥としない政治風潮を嘆かわしく思うと同時に、危うさを感じる。

 気になるのは辺野古移設実現に力を注ぐ前原誠司民主党政調会長の動向だ。野田佳彦首相は、政府の意思決定に際し政調会長の了承を原則とする方針を示した。地域の声を無視した政策が一層ごり押しされないか心配になる。

 期待が持てるのは斎藤勁(つよし)官房副長官だろう。10年1月に都内で開催された辺野古・新基地建設反対の集会で「グアムに行ってもらったらいい」などと発言した。同年10月のシンポジウムでは、沖縄の状況から県内移設は無理と強調している。

 斎藤副長官に求められるのは、閣僚たちに沖縄の実情を説明し、官僚の主張を妄信せず、自らの頭で考えるよう仕向けることだ。ちょっと理性を働かせれば、国土の0・6%にすぎない沖縄に在日米軍専用施設の74%(面積)が集中する不条理さはすぐに理解できるだろう。

 沖縄は凄惨(せいさん)を極めた地上戦の末、米国に占領された。基地は米軍が土地を強制接収し築いたものだ。1972年の施政権返還後も半ば占領同然の状態は続く。普天間飛行場の面積はわずか480ヘクタール。政府がその気になれば県内移設抜きの返還はきっと実現できる。過ちを正せる内閣であってほしい。

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