近年の日本外交の地盤沈下に歯止めをかけ、国際的な発言力を高める。野田内閣の発足を、その転機としたい。
野田首相は就任記者会見で、「世界が多極化する中、時代が求める外交・安保政策の軸は日米関係で、その深化・発展を遂げねばならない」と強調した。
首相の手腕は未知数だが、その基本方針で突き進んでほしい。
日米同盟は、アジア太平洋の平和と安全を支える公共財として機能してきた。それは多くのアジア諸国の共通認識でもある。日米関係の不安定化は、日本とアジア各国の関係にも悪影響を及ぼす。
ここ数年、日本外交を取り巻く環境は厳しくなっている。5人連続の短命首相に加え、中国など新興国の台頭で、外交を支える国力の相対的低下は否定できない。
特に2年前の政権交代後は、鳩山元首相の未熟な外交と菅前首相の懸案先送りで、日米関係は迷走・停滞した。まずは強固な日米同盟を再構築することから、外交を立て直さねばなるまい。
今月下旬の国連総会に続き、11月の主要20か国・地域(G20)と東アジアの首脳会議、アジア太平洋経済協力会議と、首脳外交の日程が目白押しだ。オバマ米大統領ら各国首脳と信頼関係を築き、日本の国益を守る必要がある。
最も重要なのは、鳩山、菅両氏のように単に「同盟深化」を唱えるのでなく、懸案の解決に向けて具体的な行動をとることだ。
米国は、米軍普天間飛行場の移設問題で「1年以内の進展」を求めている。それができない場合、在沖縄海兵隊のグアム移転が大幅に見直される恐れがある。
野田首相は、玄葉外相、一川防衛相、川端沖縄相とともに、沖縄との協議を重ね、打開策の模索に全力を挙げねばならない。
中国との対話も重要だ。
昨年秋の尖閣諸島沖での漁船衝突事件以来、日中韓首脳会談は開催したものの、東シナ海のガス田問題などは膠着こうちゃく状態が続く。
安全保障面の協議や経済・通商面の協力を拡充し、「戦略的互恵関係」を掛け声だけでなく、真に実のあるものにすべきだ。
前政権が決断を先送りした南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣でも、早期に結論を出すことが肝要である。
自民党など野党に求めたいのは、国会審議を理由に、首相や外相の外国訪問を制約する悪あしき慣例をやめることだ。「国会の権威」を盾に国益を損ね続けることは、国民の理解を超えている。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.