The Iraq War Is Over, But Its Story Is Incomplete

Edited by Josie Mulberry

 

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社説:イラク戦争終結 総括は終わっていない

米国としては早く忘れたい悪夢だろう。03年3月のイラク戦争開始から8年9カ月。オバマ大統領が戦争終結を宣言

した。だが、米兵の死者は約4500人、戦闘やテロで死亡したイラクの民間人は10万人以上にのぼる。傷痕は深い。

そう簡単に忘れていい戦争ではないはずだ。

イラク戦争は昨夏、米軍戦闘部隊が撤退した時点で実質的に終わっているが、その後も少数の駐留米軍がイラク治安部隊の養成などに当たってきた。米軍撤退が、予定通り年内に完了することを歓迎したい。

その一方で、「この戦争は何だったのか」という疑問を改めて覚える。ブッシュ前政権が戦争の大義としたイラクの大量破壊兵器は見つからなかった。91年の湾岸戦争後、国連査察団はイラクで同種の兵器を廃棄してきた。03年時点でイラクが問題の兵器をため込んでいるとは、もともと考えにくかったはずである。

また、「アラブの春」からも見てとれるように、世俗的な独裁者たちとイスラム主義は、概して対立関係にある。フセイン元大統領も米軍の尋問に対し、01年の同時多発テロの首謀者ウサマ・ビンラディン容疑者への強い警戒感を示した。同時テロとフセイン政権を結びつけるのは最初から無理があったのだ。

さらに、パウエル米国務長官(当時)が開戦直前、国連安保理で説明したイラクの「移動式生物兵器製造装置」も、アルコール依存が疑われる人物のでっち上げと判明した。

 

本当に、こんな初歩的なことに気付かぬまま戦争に突入したのだろうか。ブッシュ政権がイラク戦争を決断した本当の理由はまだ語られていない、と見る人は少なくない。戦争の総括は終わっていないのだ。

 

イラク戦争は米国の国際的信用を損ない、アフガニスタン戦線と合わせて巨額の戦費負担が、唯一の超大国を内向きにした。米国が突っ走れば、それを止めることができない国際社会の無力さも、人々の記憶に刻まれた。考えるべき問題は

多い。

オバマ大統領は「戦争終結は開戦より難しい」と語った。イラク情勢はなお不穏だ。米政府の期待とは裏腹に、親米政権が根付くかどうかも不透明だ。今のイラクには、反米のイランやシリアの保護下で活動した政府要人が少なくない。同じイスラム教シーア派主導の国として、3国が反米姿勢を強める可能性もある。

だが、イラク国民は流血も対立もたくさんだろう。米軍が去った後、イラク政府は治安維持と民政の安定に全力を挙げてほしい。野田佳彦首相とマリキ首相は先月、両国の経済関係の強化などに合意した。日本がイラクの復興を支援しつつ良好な2国間関係を築くことを期待する。

毎日新聞 2011年12月18日 2時30分

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