米朝核合意 ウラン濃縮停止を見極めたい(3月2日付・読売社説)
北朝鮮の核開発に歯止めをかけることにつながるのか。重要なのは、合意した措置を確実に実行することである。
米国と北朝鮮が、先週、北京で行った協議について、北朝鮮がウラン濃縮活動などを一時停止する一方、米国は24万トンの食糧支援を実施することで合意した、と発表した。
発表まで約1週間たったのは、合意内容の点検や関係国との調整が必要だったためと見られる。
米政府によると、北朝鮮が停止するのは、長距離ミサイル発射、核実験、ウラン濃縮活動を含む寧辺での核活動だ。北朝鮮は、国際原子力機関(IAEA)による核活動停止の検証、確認を受け入れることも同意した。
北朝鮮は3年前、IAEA要員を寧辺から強制退去させ、2度目の核実験を強行した。保有するプルトニウム全量を「兵器化」し、ウラン濃縮活動を開始する、と宣言して核開発を続けている。
このままでは、北朝鮮の核ミサイル配備も時間の問題だ。その危険を考えれば、今回の合意は、米政府が言う通り「限定的ながらも重要な進展」には違いない。
問題は、北朝鮮がウラン濃縮を確実に停止するのかどうかだ。北朝鮮は、幾度も合意を反古(ほご)にしてきた経緯がある。合意履行の手順について、米国は、抜け道を許さぬよう厳しく詰めるべきだ。
米国からの食糧支援は乳幼児や妊婦向けの栄養補助食品で、必要に応じて追加支援する可能性もあるという。北朝鮮はこの食糧支援の状況を見定めながら、ウラン濃縮停止や検証受け入れなどの具体的措置を講じるのではないか。
米国の当初の計画では、2万トンずつ1年かけて提供する予定だ。北朝鮮がウラン濃縮停止に動くのは、最初の食糧の到着時か、それとも相当量が到着した時なのか。明確にしておく必要がある。
合意が履行されたとしても、安心するのは危険だ。
ウラン濃縮の停止について、合意は、北朝鮮が米国の核専門家に公開した寧辺の施設だけを対象にした。合意は、あくまで核活動の部分的な「停止」に過ぎず、秘密の核施設で北朝鮮がウラン濃縮を続ける可能性は十分に残る。
金正日総書記の死去後、北朝鮮は若い正恩氏を中心とする後継体制固めを急いでいる。その体制が脆弱(ぜいじゃく)であればあるほど、「革命の遺産」である核とミサイルにしがみつき、手放すはずはない。
北朝鮮の根本的な脅威は減じておらず、警戒は怠れない。
(2012年3月2日01時16分 読売新聞)
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