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Posted on March 28, 2012.
米軍普天間飛行場の移設反対運動になぞらえて「もう一つの辺野古」ともいわれる沖縄の基地問題がある。
本島北部、東村(ひがしそん)高江地区への軍用ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐる争いだ。
工事現場に通じる道路で、反対派の住民が座り込んだ。これが妨害に当たるとして、国が2年前に住民を訴えた。
那覇地裁は先週、住民1人に違法な妨害があったと認め、通行の妨害を禁止する判決を言い渡した。住民は控訴の構えだ。
問題をおさらいしてみる。
日米両政府は1996年、米軍が使っている沖縄の北部訓練場の約半分の約4千ヘクタールを返すかわりに、7カ所のヘリパッドを返還されない区域の6カ所へ移すことで合意した。
人口150人余の高江地区は東が太平洋に面し、残る三方に北部訓練場が広がる。
そのため、ヘリパッドはこの地区を囲むような配置になる。最も近い民家とは約400メートルしか離れていない。
高江の人たちは「基地の中に住むのも同然になる」と、区民総会で2度、反対を決議した。訓練場を使う米軍ヘリは今も住宅の上で旋回を繰り返し、騒音がとどろく。ヘリパッドが完成すれば、さらに騒音や墜落の可能性が高まると心配する。
飛行ルートや周辺への騒音対策はどうなるのか。不明な点が多い。新型輸送機オスプレイの配備も取りざたされる。
すぐ近くで接する人たちが不安に思うのは当然だ。
沖縄防衛局は住民が求めた話し合いの場も設けないまま、07年に建設準備に伴う重機や資材の搬入に着手した。これに住民たちが抗議活動を始めた。
工事は進まなくなった。
賛否がある問題で国が住民を訴えたことで、地元の人たちに強い違和感が残った。法律家もそろう政府と違い、住民は交通の便の悪い北部から裁判所へ通うことから負担が重かった。
高江の人たちはやみくもに反対しているわけではない。政府に十分な説明を求めている。
すでに米軍が使っている訓練場内での移設工事とはいえ、訴訟を始める前に、政府から取るべき手段はなかったのか。
日米関係は大切だ。だが、まわりの住民に理解されず、支持されない施設は存在の基盤が弱くなる。それは米国も歓迎しないだろう。
沖縄防衛局は米軍に対するほどの思いやりを、地元の住民にも示すべきだ。誠実に疑問に答え、対策を提案する。今からでもやるべきことがある。
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