The Issues Are Now Clear for the Presidential Election

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大きな政府か、小さな政府か。富裕層への増税か、財政削減か――。

11月の米大統領選に向け、民主、共和両陣営の争点が明確になってきた。

経済が低迷し、唯一の超大国という自信を失いつつある米国をどこへ導くのか。両陣営の主張は大きく異なる。論戦の行方を見守りたい。

共和党の大統領候補となるミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が、徹底した財政削減論者のポール・ライアン下院予算委員長(42)を副大統領候補に選んだ。富裕層増税を掲げる現職の民主党ペアとの路線の違いを際だたせるねらいだ。

ライアン氏は若手の財政通として知られる。予算委員長として、政府案に比べて歳出を10年間で5兆ドル(約390兆円)以上減らす財政削減策をまとめるなど、オバマ政権との対決路線を引っ張ってきた。

小さな政府を志向する財政保守の草の根運動「茶会(ティーパーティー)」の受けもいい。

保守層に人気のあるライアン氏と組むことで、一気に攻めの姿勢に転じる作戦だ。

米国経済は、失業率が8%台で高止まりするなどオバマ政権にとって厳しい情勢が続く。にもかかわらず、ロムニー氏の選挙運動は盛り上がりを欠き、支持も広がっていなかった。

ただ、穏健保守のロムニー氏にとって、ライアン氏の起用は一種の「かけ」でもある。

ライアン氏の財政削減策には、高齢者向け医療保険費の大幅削減など、中間層にとっても抵抗が強い内容が含まれる。これを嫌って穏健な支持層が離れる恐れもある。

民主党は早速、「歳出削減は富裕層減税のためで、中間層には増税になる」「高齢者は大幅負担増になる」と批判し、揺さぶりをかけている。

一方、外交・安全保障面ではロムニー、ライアン両氏ともに目立った実績はない。

オバマ氏は、国際テロ組織アルカイダを率いたオサマ・ビンラディン容疑者の殺害に成功したことなどを実績としてアピールする。

これに対し、ロムニー氏はこれまでのところ、イランの核問題や対中国政策などで強硬な姿勢が目立つ。

陣営にはブッシュ前政権を支えたタカ派が外交ブレーンに入っており、米国の単独行動主義が再び顔を出すのかどうかが気がかりなところだ。

対日政策については、ほとんど語っていない。選挙戦の中で明らかにしてほしい。

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