穀物価格高騰 食料危機の再燃は防ぎたい(8月20日付・読売社説)
トウモロコシなど穀物の価格が高騰し、世界各地で食料インフレへの懸念が強まっている。
食料価格の上昇は世界経済の足かせとなるだけでなく、新興国の政情不安や飢餓人口の増大など国際社会にマイナスの影響を与える。
2008年の食料危機では、生産国の輸出制限などに反発し、各地で暴動が広がった。危機を再燃させないよう、日本など各国は警戒を怠ってはならない。
シカゴ先物相場では7月以降、トウモロコシや大豆の取引価格が相次いで史上最高値を更新している。国連食糧農業機関(FAO)が発表する食料価格の世界的な動向を示す指数は今月、2年ぶりに急上昇した。
高騰の要因は、記録的な熱波と少雨により、米国で半世紀ぶりとなる深刻な干ばつが発生したことだ。被害は国土の6割に及び、世界生産の4割を占めるトウモロコシ、大豆の生産量が大幅に落ち込むと予想されている。
ロシア、インド、中国なども天候不順に見舞われた。小麦の主産地であるロシアでは生産が2割程度減少する見通しだ。
先進国の金融緩和によるカネ余りで、投機資金が穀物相場に流入し、価格上昇に拍車をかけていることも気がかりである。
穀物の大半を米国からの輸入に頼っている日本の食卓にも、影響が出始めている。
食用油メーカーは値上げを打ち出した。穀物高騰が続けば、豆腐やみそ、しょうゆ、マヨネーズなど、多くの日常食品の価格も上昇する可能性がある。
畜産飼料に多く使われるトウモロコシの価格高騰は、食肉価格を押し上げ、卵や乳製品の値上がりにつながりかねない。
日本は、官民が連携して穀物の調達先を多様化するなど、影響を最小限に食い止める方策を検討する必要がある。
国際的な対応策も急務だ。
主要20か国・地域(G20)は、主だった穀物の生産や在庫、市況などに関する情報を共有する新たな組織を発足させた。G20の連携を強化し、価格安定や市場の不安解消につなげてもらいたい。
米国は、トウモロコシを原料とするバイオ燃料の使用義務を一時的に停止し、食料や飼料に回すことを検討すべきではないか。
新興国で食肉消費が増え、飼料用を含む穀物需要は飛躍的に伸びている。各国は、生産性を向上させる技術革新や農業投資の促進などの課題にも取り組むべきだ。
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