The Presidential Candidates Must Devise a Cure for the Economy

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 米大統領選が終盤戦に入る。米国がこの先、どんな針路を目指すかは経済、安全保障の両面で日本にも重大な影響を与える。選挙戦の主たる争点は医療保険制度改革など国内政策だが、内向き一辺倒でない論戦に期待したい。

 野党・共和党の党大会はフロリダ州で始まった。予備選に勝ったロムニー前マサチューセッツ州知事が30日に候補指名を受諾して閉幕する運びだ。

 与党・民主党の党大会は9月4~6日の予定。オバマ大統領の再選出馬を正式決定する。11月6日の投票日に向けて、両候補は3回の討論会に臨む。

 最大の対立点はどうやって米経済を立て直すかだ。負担増を避けたい富裕層を中心に「小さな政府」への待望論が勢いづく。逆に貧困層などは公費による救済拡大を求め、オバマ政権の「大きな政府」路線を守ろうと懸命だ。

 ロムニー氏は副大統領候補に財政規律に厳格なことで知られるライアン下院予算委員長を選んだ。与野党の溝は深まった感がある。

 米国では来年1月以降、減税の期限切れと歳出削減が重なる「財政の崖」に直面する。米国の経済政策が急激に緊縮へと振れれば、自国のみならず不安定な欧州にも波及するのは必至だ。

 景気を下支えしつつ、どうやって財政を再建するのか。両候補は米国が担う世界経済への責任を自覚して、分かりやすい経済再生の処方箋を示してほしい。

 他方、外交・安保政策ではやや歩み寄りの気配がみえてきた。

 「強い米国」を取り戻すとして強硬外交を印象づけてきたロムニー陣営だが、親中派のゼーリック前世界銀行総裁も新たに参加。中国に硬軟両様で臨むオバマ政権と差はさほどではなくなった。

 米外交のぶれが小さくなれば、鳩山政権で揺らいだ日米関係の立て直しの端緒もつかみやすい。アーミテージ元国務副長官ら超党派の知日派が発表した日米同盟再構築に関する報告書が参考になる。

 ロムニー氏は先に演説で日本のことを「1世紀にわたる衰退と苦難に陥っている国」と評した。周辺に知日派がおらず、聞いた話を受け売りしたらしい。

 日本人には愉快な発言ではないが、米国全体の日本への関心が下がっていることの証左ともいえる。日本政府はいずれの候補が勝っても大丈夫なように万全のパイプづくりを急がねばならない。

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