The US Presidential Election Lacks a Deep Discussion of Asia

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米大統領選は11月6日の投票日まで残り3週間を切り、再選を目指す民主党候補のオバマ大統領と、共和党候補のロムニー前マサチューセッツ州知事が激しいデッドヒートを続けている。

 16日には両候補による2度目のテレビ討論会が行われ、内政や外交をテーマに舌戦が展開された。

 米大統領選の討論会といえば、勝負の行方に大きな影響を与える重要なイベントだ。候補が直接対決し、焦点の政策について激論を交わす。話の中身だけでなく、受け答えや表情も含め、指導者としての人間性を試される場である。

 内政がテーマとなった初回の討論では、失業率の高さなどオバマ政権の「失政」を追及したロムニー氏が優勢との印象を与えた。その後支持率を伸ばし、一部の調査ではオバマ氏を逆転した。

 前回精彩を欠いたオバマ氏は、今回は戦術を変更し、積極的にロムニー氏を攻撃して反転攻勢を図った。中間層に配慮する姿勢をアピールし、巻き返しに一定程度成功したようだ。

 両候補ともここを勝負どころと見たのか、相手の発言をさえぎって反論したり、時には壇上でにらみ合ったりするほど熱が入っていた。

 しかし応酬の激しさとは裏腹に、日本など米国以外で大統領選に注目している人々にとっては、物足りなさが残る討論だったと言えるだろう。外交政策での掘り下げが不十分であったからだ。

 外交論議では、イランの核開発やリビアでの米領事館襲撃など、中東政策が中心となった。対アジア外交に関し、両候補とも発言が少なかったのは残念だ。

 経済的に台頭し、急速な軍事増強を続ける中国に対して、米国がどのような戦略で向き合うのかは、日本も含めたアジア諸国の最大の関心事である。

 対中政策でロムニー氏は「大統領に就任したら、中国を為替操作国に認定する」と対決姿勢を前面に出した。一方オバマ氏は「われわれが中国に圧力をかけてきたことで、元相場は上昇し、対中輸出は大幅に伸びている」と強調した。

 お互いに、有権者に向け対外強硬姿勢を競い合うという、選挙戦でお決まりのパターンにとどまり、明確で包括的なアジア戦略を提示しなかった。

 特にロムニー氏の場合、外交経験の乏しさが弱点と指摘されている。これまでに、日本を「10年あるいは1世紀にわたる衰退と苦難に陥っている国」と表現するなど、基本的な認識不足を疑わせる発言もしている。「外交下手」の批判に反論するためには、正確な認識に基づく大局的なアジア政策を示す必要がある。

 討論は今月下旬に最終回が行われる。今度は外交や安全保障が主要テーマとなる。好むと好まざるとにかかわらず、米国は事実上、現在の国際社会の秩序維持に最も大きな責任を担う国だ。その指導者の座を争う両候補が最後にアジアをどう語るのか、注視したい。

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