米・小学校乱射 今度こそ銃規制の実現を
銃社会の罪深さを、あらためて見せつけられた事件である。米東部コネティカット州の小学校に20歳の男が侵入し、教室で銃を乱射して6~7歳の子ども20人を含む26人を次々と殺害した。
容疑者の男はライフル銃など3丁を犯行に使い、校舎内で自殺し遺体で見つかった。自宅で母親を射殺した後、小学校に向かったとみられ、女性校長は乱射を止めようと男に突進し、27歳の女性教員は子どもたちを別の場所に隠そうとした際に、それぞれ殺害されたという。
本人、母親ともに死亡し、動機の解明は困難が予想される。一方で、クリスマスを前に多数の幼い子どもが犠牲となった惨劇は米国社会を震え上がらせ、全米にかつてない衝撃が広がっている。
「行動を起こす」と表明していたオバマ大統領は「銃規制こそ政権の中心課題だ」と述べ、政権としての規制案を練る特別チームを設ける方針を示した。
米国は過去、銃による事件が起きるたびに銃規制の話が持ち上がっては尻すぼみになってきた。今度こそ、実効性ある法規制の実現を目指すべきである。
確かに合衆国憲法修正第2条は「国民が武器を保有する権利を侵してはならない」と明記し、米国の独立・開拓時代以来の建国精神が脈打っている。「銃に罪はない」と唱え、銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)が米国で有力な政治圧力団体として存在し続けるのも、こんな歴史と憲法があるからだ。
だが、「銃を持つ権利」を認める憲法も、社会の安全を確保するのに必要な銃規制まで禁ずるものではあるまい。
実は1990年代のクリントン政権時代、殺傷能力の高い銃の製造・販売を禁止する法律が制定された。しかし、10年間の時限立法で、ブッシュ政権時代の2004年に失効した。以後、銃規制論議は一向に盛り上がらず、今年の大統領選でも大きな争点にはならなかった。
それでも「銃による悲劇は、もう耐えがたい」(オバマ大統領)のが米国民の率直な心情だと理解したい。大統領は現在、失効している殺傷能力の高い銃への規制法復活などを検討しているという。議会でも法案を策定する動きが表面化している。この機を逸してはならない。
日本で銃器犯罪の根絶に取り組む福岡市の砂田向壱(こういち)さんは94年、長男=当時(22)=が留学中のニューヨークで強盗に遭い、射殺された。その2年前には名古屋市の服部剛丈(よしひろ)君=当時(16)=が、留学していたルイジアナ州で射殺されている。今回の小学校には日本人の子どもも通っていたが危うく難を逃れていた。
米国の銃器事件と銃規制の行方は、日本人も決して無縁ではないのだ。
私たちから見れば、誰でも簡単に銃を入手できる社会はやはり異常である。容疑者の母親は銃器マニアで、合法的に所持していたという。そこが問題なのだ。銃がなければ惨事は防げた。米国民は、そのことを思い起こしてもらいたい。
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