緩和と企業の国際化が支える米株式市場
2013/3/7 3:30
米国経済の鏡であるダウ工業株30種平均が5年5カ月ぶりに最高値を更新した。「100年に1度」とされたリーマン・ショックの痛手から、米国が先進国のなかで最も早く立ち直りつつあることを世界に示したともいえる。
米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和に支えられた面は強いものの、株式市場の活性化は投資や消費を刺激し、本格的な景気回復への道を開く。こうした構図は日本経済にも当てはまる。安倍晋三首相が脱デフレを掲げる日本にとって、米国株の高値更新が示唆するものは大きい。
FRBは昨年9月、量的緩和の第3弾に踏み切った。その後もバーナンキ議長らが、緩和の重要性と長期継続にくり返し言及してきた。FRBの一貫した姿勢によって、値下がりリスクがある半面で高い収益を期待できそうな資産を購入しようという雰囲気が、投資家の間で強まった。
緩和資金の一部が向かった住宅市場には回復の兆しが強まり、米経済の先行きに強気の見方が増える一因となっている。
見落とすわけにいかないのは、米国企業が収益力を高め、金融緩和であふれたお金を引きつけたという側面だ。
金融危機の後も中国など新興国の景気は、底堅く拡大した。そうした新興国経済の高成長に対応し、グローバル化を積極的に進めたのは米国企業だった。
米国では、自国以外の国・地域の売上高が全体の半分以上を占める大企業が珍しくない。世界経済の成長をとりこむ形で、米主要500社の2012年10~12月期の純利益は6%増と、ほぼ横ばいだった昨年7~9月期から再び増勢に転じた。
欧州ではイタリアの政局が混迷し、米国は歳出の強制削減が発動した。政治が経済に与える影響に不透明感が強いなか、米株式市場が活況を保って投資や雇用の拡大につながるかどうかのカギを握るのは、企業である。
日銀の次期正副総裁候補は、量的緩和を強める意向を示した。緩和資金が市場を支える構図は世界的に一段と強まる。
あふれる資金を株式市場に確実に呼び込むには、日本企業が変わらなければならない。コスト削減策だけでなく、豊富な手元資金を生かし、収益源を世界に広げるためにM&A(合併・買収)などの投資にうって出るときだ。
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