オスプレイ配備1年 国連に人権救済訴えよ 全機撤収こそ命守る道
2013年10月1日
米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備が強行されて1日で1年が経過した。住民を巻き込む大事故は発生していないが、多くの県民がこの1年、米国内や海外で重大事故が絶えないオスプレイの安全性を疑い、墜落の危険性におののいてきた。
県民を米軍関連の事件・事故、爆音被害にさらしている日米の沖縄政策は、ほとんど植民地政策と化している。日米が民主国家であるなら県民の意思を尊重し、強行配備したオスプレイ24機の全機撤収と普天間飛行場の早期閉鎖・撤去へ向け政策を転換すべきだ。
分裂は自殺行為
オスプレイ配備については、仲井真弘多知事や県内41市町村の全首長、全議会が反対し、今年7月の県民世論調査でも追加配備に8割以上が反対した。普天間の県内移設反対は74%に上った。
日米の壁は厚いが、悲観することはない。強行配備1年を前に琉球新報が実施した県議会議長や那覇市長ら県内の行政・議会5団体代表の座談会では、オスプレイ配備撤回に向け超党派統一行動の継続で一致。県民の分裂が沖縄問題の解決にとって自殺行為であることを沖縄社会は体験的に学んできた。超党派の結束を支持する。
国連や各都道府県への行脚を通じて基地過重負担の状況を発信する必要性など積極的提言がなされたことも心強い。特に米政府や国連への働き掛けは強めたい。
1996年の普天間飛行場返還の日米合意以来、この国の官僚、政権与党は県内移設に執着して思考停止を決め込み、一方の当事者である米国と合意見直しで渡り合う気概を持ち合わせていない。
沖縄側としては人権や生命、財産を脅かす政策決定が県民の頭越しに決まる不正義をこれ以上看過できない。米国と折衝し、自ら問題解決策とより良い生き方を切り開く権利を追求せざるを得ない。
日米は72年の日本復帰後も沖縄に過重に基地負担を押し付け、人権を蹂躙(じゅうりん)している。仲井真知事は140万県民を代表してニューヨークの国連総会第3委員会(人権)に出席し、植民地政策とみまがう両政府の不当な仕打ちを告発し、県民の人権救済を訴えてほしい。国連による日米両国への改善勧告を引き出すことができれば、膠着(こうちゃく)状態にある沖縄問題を打開する大きな力となろう。
次期駐日米大使への就任がほぼ確定しているキャロライン・ケネディ氏の早期の沖縄視察や、米議会や政府の調査団派遣の働き掛けも打開策を探る上で有効ではないか。
沖縄返還を教訓に
1960年代、日米両政府は高揚した超党派の祖国復帰運動を無視できなくなり、沖縄の自治権拡大に否定的だったポール・W・キャラウエー高等弁務官ら軍部の抵抗を抑え、沖縄返還に舵(かじ)を切った。
エドウィン・ライシャワー駐日米大使らが尽力し、米政府内で沖縄の施政権を日本に返還する流れをつくったことが報道や日米関係の研究で明らかになっている。
沖縄返還の難事業を成し遂げた日米に普天間返還やオスプレイの全機撤収ができないはずはない。
オスプレイの普天間配備の理由として、両政府は「抑止力の向上」を挙げる。だが非営利組織「米政府監視プロジェクト」のベンジャミン・フリーマン博士は「オスプレイは超音速の戦闘機ではなくただの輸送機。日本への攻撃や侵略を防ぐ能力はない。抑止力なら既に存在する空軍が担っている」と指摘。オスプレイの沖縄配備は「不要」と断言している。
日米の安保専門家の間では在沖海兵隊駐留や普天間県内移設の軍事合理性について懐疑的意見が増え、状況は変化している。両政府が日米合意と相いれない見解に目を背けることは非人道的で罪深い。
日米は普天間飛行場の閉鎖・撤去、海兵隊撤退など問題の根本的解決に向け仕切り直すべきだ。日米首脳は沖縄も民主主義、法の支配、基本的人権尊重の適用対象であることを忘れてはならない。
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