ケネディ新大使 人道に反する現実直視を
2013年10月20日
次期駐日米大使に、キャロライン・ケネディ氏(55)の就任が決まった。50年前に暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領の長女で、女性初の駐日米大使となる。 オバマ大統領の信任が厚いとされるケネディ氏に対し、日本政府内では日米同盟強化の弾みになるとの期待感が高まっている。沖縄の視点は異なる。在日米軍施設の74%が集中し、事件・事故、騒音被害が絶えない重い現実がある。過重負担の改善を優先してほしい。
ケネディ氏は弁護士資格を持ちNPO活動に熱心だが、行政や外交の実務に携わった経験はない。このため、米軍普天間飛行場返還問題を含む日米関係や、尖閣諸島をめぐる日中対立など対アジア外交の手腕を不安視する向きもある。しかし、外交の「素人」だからこそ、前例にとらわれない斬新な発想も期待できよう。
普天間飛行場の名護市辺野古移設計画については、返還合意から17年が経過しても県民に拒絶される政策の異常性を直視すべきだ。
仲井真弘多知事や県議会、県下41市町村の全首長、全議会、県民の大半が辺野古移設に反対している。民意を無視し続ける民主国家が世界のどこにあるだろうか。
ケネディ氏は、9月の上院公聴会で日本という新天地で「父が体現した理想を守っていく責任を自覚している」と述べた。理想高き外交トップの真価を、人道、民主主義に反する辺野古移設を断念することで示してほしい。
ケネディ氏の助言役の一人とされる、米シンクタンク外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員に注目したい。スミス氏は「これ以上日米同盟の負担を沖縄に押し付けてはならない」として、普天間の県外移設を提唱してきた。
「普天間が今後の在日米軍基地計画に与える教訓」と題した論文(県地域安全政策課ホームページに掲載)でも、沖縄の民意を重視する主張を展開し、日米の政策アプローチを基地負担の公平性や政治的持続可能性を疑問視する観点から厳しく批判している。
ケネディ氏には日米安保政策を主導してきた「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる人たちと一線を画し、先入観を排して沖縄問題に臨んでほしい。まず沖縄の現実をつぶさに視察し、基地周辺住民をはじめ県民各層の切実な声に耳を傾けることから始めてほしい。
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