The ‘Comfort Women’ Statue: Let History Speak through the Facts

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「慰安婦」像…歴史は事実をもって語らせよ 佐々木類

2014.2.8 08:00

 見たくはないシーンを見せられてしまった。エド・ロイス米下院外交委員長(共和党)が、韓国系米国人らが設置した「慰安婦」像前で、ひざまずいて線香をあげる姿だ。カリフォルニア州グレンデール市の公園内で行われた“政治ショー”は、さぞかし、地元韓国系住民を喜ばせたことだろう。

 11月の中間選挙で改選となるロイス氏の選挙区は、グレンデール市近くのカリフォルニア39区。韓国系住民が多い。ロイス氏は、1992年から連続11回当選だ。落選すれば、日米関係どころではないのだろう。慰安婦像前でのパフォーマンスは、票目当ての売名行為にしか見えない。

 「歴史を認めることが、正しい道だ」。ロイス氏は記者団にこう語った、という。この言葉をそっくりそのまま謹呈したい。

 日本政府は、慰安婦の「名誉と尊厳を傷つけた」と、おわびと反省の気持ちを表明している。

 元慰安婦への補償は、昭和40年に締結した日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に解決済み」だ。償い金を支払うためアジア女性基金も設立した。強制連行を認めた河野談話が、ずさんな調査に基づくことは、元慰安婦への聞き取り資料で明らかだ。

 韓国側は、旧日本軍が性奴隷として約20万人の朝鮮半島出身女性を強制連行したというが、証拠はない。現代史家の秦郁彦氏は、陸軍省の資料を分析した結果、慰安婦の総数は1万数千人で、日本人が4割、半島出身者は2割だったと結論付けている。むろん、軍の強制連行を示す資料などない。

 ロイス氏が事実に基づかずに韓国側におもねるのなら、外交委員長としての適性に疑問符がつく。

 元慰安婦への謝罪と補償を日本政府に促した2007年の下院決議もロイス氏が発起人だ。カリフォルニア州の韓国系住民の多い17区が地盤で、中間選挙で苦戦が伝えられる日系のマイク・ホンダ氏もその一人だ。4日付でケリー国務長官宛てに書簡を出し、慰安婦問題に関する正式な謝罪を日本政府に促すよう求めている。

 そのホンダ氏と、首都ワシントンの日本風居酒屋で偶然お会いしたことがある。大統領選を肴(さかな)に話は弾んだのだが、わたしが産経新聞記者であることを友人が明かして空気が一変した。弊紙がホンダ氏を批判してきたことをよくご存じだったのだろう。わたしが「軍の性奴隷なんていませんよ」と言うと、仏頂面で立ち去った。

 バージニア州における日本海の呼称問題も、票目当てのパフォーマンスという点で同じ構図だ。州下院は、州の公立学校の教科書に韓国系住民が主張する「東海」と併記させる法案を可決した。

 だが、ワシントン・ポスト紙は社説で、「歴史は、歴史家の優れた判断に任せるのが最適だ」と議会を批判した。安倍晋三首相の靖国参拝を「挑発的な行動」と批判してきただけに、歴史認識に関する日本海の呼称問題で、州議会を批判したのは注目に値する。

 国によって歴史観は異なるものだ。日本からみると、韓国こそ歴史を歪曲(わいきょく)して反日宣伝に利用しているようにみえる。米議員には公平な視点を忘れないでほしい。(論説委員)

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