中国が米国と対話
2014年7月16日
一国主義的な傾向抑制せよ
米中両政府は北京で、安全保障や外交、経済など幅広いテーマについて協議する閣僚級の「戦略・経済対話」を行った。東シナ海と南シナ海の領有権をめぐる問題では、双方の主張が激しく対立し、懸案のサイバー問題も物別れに終わった。だが、国際社会に強い影響力を持つ米中両国の担当閣僚が年に1度、グローバルな課題や2国間関係まで、じかに意見を交わす意味は大きい。
海洋権益で強硬姿勢
この1年、中国の習近平政権は海洋権益や軍事プレゼンスの拡大を目指し、日本やベトナムなど周辺諸国に対して強硬姿勢を強めた。米中対話など国際社会の働きかけにより、中国が一国主義的な傾向を抑制し、自らが主張するとおり、真の「平和的な台頭」に向かうよう求めたい。
米中戦略・経済対話は2009年4月の首脳会談で創設に合意し、同年7月に初会合を行って以来6回目。今回の主要議題は(1)東・南シナ海の領有権(2)サイバーセキュリティー(3)少数民族と人権(4)北朝鮮の核開発(5)気候変動など環境(6)投資協定と人民元-だった。
領有権問題では、米側が「法の秩序」に基づく行動を求めたのに対し、中国側は「今後も領土主権と海洋権益を断固として守る」と反論。海洋権益をめぐる中国と周辺諸国とのあつれきは今後も続きそうだ。
しかし、米政府発表によると「空や海上での行動規範に関する作業部会に双方の海洋当局を加えて協議」「米中両軍は、実務的な防衛対話の構築やリスク軽減措置の強化」で一致した。不測の衝突回避で合意した点は評価したい。
米政府は、サイバー攻撃による中国の産業スパイの暗躍を重く見ており、5月にはサイバー攻撃を行ったとして中国軍の5人を起訴した。ケリー米国務長官は共同会見で「米国は恐ろしい影響を受けている」と指摘したが、中国側はこの問題に関する作業部会を中断したまま再開には応じなかったとみられる。
国際協調と民主化を
対立点だけに関心が集まりがちだが、北朝鮮の核問題や気候変動への協調的な対応、為替制度の柔軟性の向上や米中投資協定締結に向けた交渉の加速に合意するなど収穫も少なくなかった。
昨年3月、国家主席に就任した習氏は「中国の夢」を目標に掲げ、米国と比肩する大国を目指す。上海で5月に開いたアジア相互協力信頼醸成会議(加盟26カ国)の首脳会議の演説では「アジアの安全はアジア人民が守らなければならない」と述べ、アジア重視政策を掲げる米国をけん制。昨年来、日本主導の世界銀行やアジア開発銀行に対抗し「アジアインフラ投資銀行」の設立も提唱し始めた。
米中関係は常に協調と対抗の両面を持つが、米政府の持続的な働き掛けで、中国が国際協調し、民主化された「開かれた大国」の道に向かうよう期待したい。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.