黒人青年が白人の警察官に射殺された事件をめぐり、米国で激しい抗議行動が発生した。一連の出来事は、米国の歴史に刻み込まれた人種差別の根深さを浮き彫りにした。
オバマ氏は「一つの米国」を掲げて大統領に当選した。残り任期は2年半足らずだ。米国の人種対立を克服できるか真価が問われている。
射殺事件は9日、米中西部ミズーリ州ファーガソンで発生した。銃を持っていない青年に警察官が発砲したことに、多くの市民が怒り、警官隊と衝突した。警官が白人で青年が黒人だったため人種問題になった。
米国は奴隷制を廃止し、人種隔離制度を撤廃したが、黒人差別問題は繰り返し起きている。1992年にはロサンゼルスで黒人男性を殴打した白人警官が無罪となったことに黒人が猛反発、史上最悪の暴動に発展した。
今回事件が起きたファーガソンの人口の3分の2は黒人だが、警察官の大多数は白人。市長ら支配層も白人だ。地元警察への黒人住民の不信感は根強い。セントルイス郡検察トップの白人検察官に対し、黒人側は中立性に疑問を投げ掛けている。
さらに黒人青年を射殺した警察官を起訴するかどうか判断する大陪審で、陪審員12人のうち黒人は3人しかいない。
白人優位社会に加え、白人と黒人間に横たわる貧富の差も人種対立を鋭くしているとみられる。
CNNによると、白人と黒人の間の資産額の格差は過去25年間で約3倍に拡大した。黒人世帯の資産額の中間額は6446ドル。白人世帯(9万1405ドル)の10分の1以下にすぎない。
7月の米労働省の統計によると、白人の失業率5・3%に対し、黒人は倍以上の11・4%。国勢調査局によると、2012年の黒人の貧困率は4人に1人に当たる27・2%。白人は9・7%で10人に1人だ。
米国は1950年代に黒人と白人の法的な平等を求める公民権運動が広がりをみせた。ことしは公民権法が成立してから50年の節目に当たる。
人種差別問題に真剣に取り組まなければ、再び白人社会への敵視が強まり、米国は分断されたままになってしまう。黒人初の大統領としてオバマ氏は、差別と格差の克服に向け具体的道筋を付けるよう全力で取り組んでほしい。
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