<社説>エアバッグ回収 全世界での対応を急げ
2014年12月9日
人の安全に関する問題は急を要する。まして生命に関わるような問題なら、遅滞は許されない。
自動車部品大手タカタ製エアバッグの欠陥問題が深刻化している。米国内の反発はむしろ強まっている。同社はリコール(無料の回収・修理)の全米への拡大を明言していないが、拡大は免れない情勢だ。これにとどまらず、日本を含む全世界での対応を急ぐべきだ。
タカタはエアバッグで約2割の世界シェアを持つ世界第2位のメーカーだ。問題は、このエアバッグが作動する時に破裂してガス発生装置の金属片が飛び散り、乗員がけがをする恐れがあるというものだ。
2008年以降、リコールが相次ぎ、ことし12月4日までのリコール届け出数は国内で計約279万台、全世界では少なくとも1330万台に拡大した。米国とマレーシアで計6人が関連事故で死亡したと報じられている。
詳細な原因は不明だが、湿度が高い環境で問題が起きやすいとして、ホンダやマツダなど自動車メーカー5社は、米国では南部などの高温多湿地域に限定してリコールを実施してきた。だが米道路交通安全局は11月、リコールを全米規模に拡大するよう求めた。
だが交換部品の供給は追い付いていないのが現状で、タカタは対応を明言しなかった。すると12月3日の米上院の公聴会では議員から「米当局の要求を拒絶し、国民を危険にさらしている」「一体、何人が命を落とすことになるのか」と集中砲火を浴びた。
ホンダはリコールを全米に拡大すると表明した。不具合の原因が分からなくても自主的に自動車を回収する「調査リコール」という手法だ。タカタ以外の日欧の部品メーカーからも交換部品を調達することにした。タカタの対応を待っていては自社への悪影響を避けられないと判断したのだろう。
さらにトヨタも国内で予防的措置としてのリコールに踏み切った。原因が分からない段階でのリコールは日本では極めて異例だ。前例にこだわらぬ素早い対応は高く評価できる。
タカタはホンダや米当局に全面協力する姿勢を示したが、全米での回収は明言していない。原因不明の段階では科学的根拠がないという主張のようだが、事は命に関わる。後手に回っては取り返しがつかない。緊急性に鑑み、早期収拾に全力を挙げてもらいたい。
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