TPP交渉/譲歩は地方創生危うくする
安倍晋三首相は、早期の合意を望んでいよう。12カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉のことである。
アベノミクスの第1と第2の矢である金融緩和と財政出動について、今や円安をはじめ弊害と限界が指摘される中、経済の好循環実現の鍵を握るのは、企業・民間の活力を喚起する第3の矢、成長戦略である。その強力な柱がTPPだからだ。
この協定は、ヒト・モノ・カネの国境を越えた移動の障害を取り除くことが目的だ。国内で言えば、これらの自由な行き来を阻む障壁の撤廃や緩和、つまり規制の改革につながる。
外資を含め、成長戦略が目指す「世界で一番、企業が活動しやすい国」というビジネス環境を整える上でTPPは欠かせない。その合意は、首相が渇望する「成果」の一つに違いない。
政権基盤をより固めた首相が妥結に向け、以前にも増して前のめりにならないか、心配だ。
交渉は難航を極める。数ある交渉分野のうち知的財産権や国有企業改革で、米国と東南アジア各国との溝が埋まらない。日米間では、コメや牛・豚肉を含む五つの「聖域」農産物を軸に関税分野での隔たりが大きい。
参加国の経済規模全体の約8割を占める日米の、その協議の進展具合が交渉全体を左右するとされ、各国は注視する。
もっとも、日米協議、そして交渉そのものの行方と密接に絡むのは米国の政治状況である。
野党・共和党が上下両院で多数の中、交渉合意に意欲的とされるオバマ大統領が、通商に関しては対立を乗り越え議会から交渉権限の一任を取り付けられるかどうかが、一つの焦点だ。
もう一つは来年に控えた大統領選が夏以降、本格化するため夏までが大筋合意の「期限」になることだ。逃せば、交渉そのものが「漂流」しかねない。
漂流を恐れ、「成果」を急ぐあまり、農産物の市場開放を迫り続ける米国に日本が歩み寄り妥協することなどあってはならない。米政権の出方を慎重に見極めることが何より肝要だ。
交渉参加に際し、地方は反対・慎重姿勢を示した。なぜなら、貿易自由化の加速は、安価な輸入農産物を一層流入させ、農業に打撃を与え、ひいては地域の崩壊につながりかねない、と強い危機感を抱いたからだ。
政権は今、「地方創生」の旗を振る。地方に5年間で30万人分の若者の雇用を創出するという。その基盤の一つを農業の成長産業化・6次産業化に置く。
TPPによるビジネス環境の整備は、地方創生のエンジンにもなると政府は言うだろう。
だが、米国に譲歩し重要農産物の市場を開けば、開放まで猶予期間があったとしても、地域農業の担い手らは将来展望と気概を失い、その「喪失感」が地域全体に波及することは想像に難くない。政府が描く地方の自主・自立による活性化は、土台から危うくなる恐れがある。
「聖域」の死守は、地方創生に向けた最低限の前提であることをも、首相は肝に銘ずべきだ。
2015年01月12日月曜日
Japan and the U.S. are great trading nations and the TTP will strengthen them both economically . In addition Japan needs to draw closer to the other Asian democracies and American allies to improve their relations with them in the face of China’s pressure and territorial claims.