<社説>日米欧識者書簡 米国は第三者ではない
2015年2月5日
まるで善意の第三者であるかのように振る舞っているが、欺瞞(ぎまん)も甚だしい。辺野古新基地建設をめぐる米国政府の態度のことだ。
日米欧の識者・文化人17人がオバマ米大統領宛てに書簡を送った。米軍普天間飛行場の辺野古移設を中止するよう求めている。
書簡にあるように昨年、地元名護市では移設に反対する市長が再選され、知事選でも反対する翁長雄志氏が当選した。衆議院選挙も、住民が選ぶ小選挙区では移設容認派が県内全ての区で落選し、反対派が当選した。民主主義の観点からこれ以上ない結果が示されている。米国が民主主義の擁護者を標榜(ひょうぼう)するなら、移設中止を求めるのが筋であろう。
米国政府はこれまで「これ(辺野古移設)は日本の国内問題だ」と繰り返してきた。だが識者の一人が指摘するように、実際には米政府が日本政府に圧力をかけてきた。米国は当事者そのものであり、物陰に隠れるようなひきょうな偽装はやめてもらいたい。
そもそも沖縄の被害は、事件事故にしろ騒音にしろ環境汚染にしろ、米国の軍隊が起こしていることだ。人ごとのような態度を取ること自体、まやかしである。
問われているのは日本政府ばかりでなく米国の不法不当な行為である。沖縄の米軍基地は、終戦直後に建設したものも、1950年代に「銃剣とブルドーザー」で強制接収したものも、いずれも占領下における私有財産没収を禁じたハーグ陸戦条約違反である。
米国はこの国際法への明確な違反を第二次世界大戦後70年も続けてきた。それなのに、あろうことか機能を大幅に拡張した基地を新たに建設させようとしているのだ。
これは安全保障上の問題でなく、歴史上にもまれな非人道的な人権侵害なのである。
こうした事実を、ほとんどの米国市民は知らないだろう。国際的にも知られていない。周知されれば日米両政府は現在のような恥知らずな態度を続けられまい。その意味では今回の識者の意思表示は心強い支援である。その良心に敬意を表したい。
辺野古では日本政府による作業強行で市民にけが人が続出している。第二の「銃剣とブルドーザー」、暗黒の米軍統治の再来である。翁長知事はじめ県は、国際的な情報空間にこうした現状をさらし、周知を図るべきだ。両政府の暴虐、不当性を世界に訴えたい。
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